●13日はサントリーホールでヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック。ソリストにユジャ・ワン。前半にブラームスのピアノ協奏曲第1番、後半にストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」。大傑作の割には実演で聴く機会が案外少ないブラームスを聴けるのがうれしい。
●ユジャ・ワンの選曲が意外な感じもあるんだけど、以前のリサイタルでベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」を演奏したときと同じような感触。一見、ユジャならではの敏捷性や切れ味の鋭さが生かされないような重い作品を、伝統的な視点とは別の観点からスタイリッシュな音楽に再構築する。ブラームスに期待しがちな少し気恥ずかしくて大きくうねるようなロマンティシズムは後退して、クールですらりとしたイケメン風ブラームスが誕生。ただし第3楽章の終結部は熱かった。猛烈な速さのテンポで駆け抜ける。唖然とするほどの鮮やかなテクニック。ソリストのアンコールが2曲もあって、シューベルト~リスト編「糸を紡ぐグレートヒェン」、メンデルスゾーンの無言歌集から「失われた幻影」。
●ニューヨーク・フィルの新音楽監督にヤープ・ヴァン・ズヴェーデンというのは意表を突かれたんだけど、現地では納得感のある人事だったんだろうか。オーケストラは非常に明快で解像度が高く、とてもパワフル。自分史上最轟音の「春の祭典」だったかも。骨太で荒々しい「春の祭典」でありながら、細部はクリア。妖しい異教性よりも音響のスペクタクルが前面に。ユニバーサルがニューヨーク拠点でDecca Goldというレーベルを新たに立ち上げて、このコンビによるベートーヴェンの交響曲第5番「運命」&第7番をリリースしていて、先にそちらを聴いた印象では、ヴァン・ズヴェーデンの目指すところはどちらかといえば伝統重視の重厚なスタイルなのかなとも思うんだけど、はたして。アンコールにワーグナー「ワルキューレの騎行」(休憩中の音出しですっかりネタバレではあったが)。カーテンコールをあまり長引かせずに、わっと盛り上がって、サクッと解散。
March 14, 2018