March 22, 2018

井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢 東京定期

●19日はサントリーホールで井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の東京定期。プーランクの「オーバード(朝の歌)」(ピアノは反田恭平)とハイドンの交響曲第6番「朝」、第7番「昼」、第8番「晩」の三部作がセットになったおもしろいプログラム。プーランクの「オーバード」で題材となるのは朝というか暁なので、暁、朝、昼、晩と一日の4つの時間帯を追いかけるような構成になっている。しかも、どちらも協奏的な作品。プーランクの「オーバード」は「ピアノと18楽器のための舞踊協奏曲」と題されるように、本来はダンサーがいたわけだけど、ヴァイオリンなしという変則編成による協奏曲。反田恭平の切れ味鋭くスケールの大きなソロが活躍。一方、ハイドンの三部作は「交響曲」とはいいつつも、バロック的な合奏協奏曲風の趣向もあって、オーケストラの各メンバーが次々とソロを聴かせてくれる。フルート、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス……。名手ぞろいのOEKの特色が生きる(ふだんこれだけコントラバスのソロを聴く機会もない)。曲の合間合間にマエストロのトーク入り。「金沢ではよくこんなふうにしているので」と。
●「晩」の終楽章が典型だけど、風がくるくると舞うような描写的な嵐の音楽なんかもバロック的。エステルハージ侯に仕えたばかりの若きハイドンの意欲と創意が伝わってくるとともに、ここからはるか後の「ロンドン交響曲」への道のりに思いを馳せずにはいられない。名人芸を前提とする協奏的交響曲から、緊密な構成感と様式美を突きつめた後期の傑作群への長い道。普段まったく聴くチャンスはないけど、10番代とか20番代の交響曲ってどんな曲だったっけ?
●OEKはこの9月よりミンコフスキを芸術監督に招くため、井上道義音楽監督とのコンビは今回で一区切り。OEKの新体制はタイトルが多い。芸術監督にマルク・ミンコフスキ、首席客演指揮者にユベール・スダーン、常任客演指揮者に川瀬賢太郎、指揮者に田中祐子。首席客演指揮者と常任客演指揮者の両方がいる。

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