●創立100周年を迎えたクリーヴランド管弦楽団が、サントリーホールで「ベートーヴェン交響曲全曲演奏会」を開催中。5日、全5公演中の3日目を聴いてきた。序曲「コリオラン」、交響曲第8番、交響曲第5番「運命」というプログラム。最初の「コリオラン」冒頭、通常ならまなじりを決して気迫の強奏で始まりそうなものだが、柔らかくふくよかなサウンドにびっくり。以後の曲目でも、アメリカのオーケストラに対する先入観をひっくり返すようなまろやかさで、なおかつこの楽団伝統の鉄壁のアンサンブルは健在。まるで緻密な音響彫刻物。キレや熱量ではなく、端正な造形美で推進力を生み出す独自のベートーヴェン。大編成の「運命」なんだけど、音圧はむしろ控えめ、音色は豊麗。
●かつてアメリカのオーケストラに「ビッグ5」なんていう言い方があったけど、それぞれ明暗が分かれ、一方で西海岸のオーケストラが元気いっぱいで、総体としては西へ西へといろんなものが向かっている印象なんだけど、そんななかでクリーヴランドは変わらずわが道を邁進しているのだと納得。このオーケストラ、セル、マゼール、ドホナーニ、ウェルザー=メストとシェフの選択にも筋が通っているように感じる。
●この後、本日6日、7日に公演あり。
June 6, 2018