●ウェルザー=メスト指揮クリーヴランド管弦楽団のベートーヴェンをもう一公演(サントリーホール)。6日のプログラムは前半に交響曲第2番、後半に交響曲第6番「田園」、「レオノーレ」序曲第3番というプログラム。昨晩と同様に、磨き上げられたアンサンブルとまろやかサウンド。交響曲第2番の第2楽章冒頭でのシルキーかつスモーキーな弦楽器の美しさと来たら。「田園」はこの演奏コンセプトともっとも曲想が合致してるかも。嵐のティンパニですら丸みを帯びて、しなやか。第5楽章は陶酔的。この日も後半は大編成でコントラバス9人体制、倍管。でも決して叫ばない。ノーブル。弦楽器はモダン配置。
●おしまいに「レオノーレ」序曲第3番。一夜のコンサートの最後にこの曲が置かれるのは珍しいのでは(アンコールならともかく)。ここ一か月の間に、この曲を聴くのは3回目だが、全部普通の状況とはいえないのがおもしろい。チョン・ミョンフンの「フィデリオ」演奏会形式では、「フィデリオ」序曲の代わりに冒頭にこの曲が置かれた。新国立劇場「フィデリオ」では、飯守泰次郎指揮東京交響楽団がフィナーレの合唱の前にこの曲を挿入し、曲が流れる間、延々と石牢が作られていた。そして今日は一夜のコンサートのメイン・プログラムとしての序曲。しかし、恐るべきは新国立劇場でカタリーナ・ワーグナーがかけた呪いで、舞台袖のトランペットが大臣到着のファンファーレを奏でたところで、思わずこの後のイジワルな鬱展開を思い出して、苦笑してしまう(あの演出では正義は敗れ、悪が勝つ)。もちろん、アンコールはなし。昨夜に続いて、マエストロのソロ・カーテンコールあり。
●今晩、シリーズの掉尾を飾る「第九」が演奏されるのだが、ワタシは2公演のみなので、これでおしまい。このコンビのベートーヴェンには気品がある。自分の好みでいえば、もう少し下品なガハハ笑いをするベートーヴェンがいいのだが、これだけクォリティが高ければどんなスタイルであれ脱帽するしか。
June 7, 2018