●うーん、始まってみたらおもしろすぎるぞ、ワールドカップ。で、フランス対オーストラリアだ。続々登場するアジア勢。さて、オーストラリアといえば、アジア予選で「つなぐサッカー」にバージョンアップした結果、ニッポン相手に敗れたわけだが、そのときの監督が現マリノス監督のポステコグルーだった。彼の戦術はマリノスで格段に先鋭化して毒々しく花開いているわけだが、それはさておき、新監督ファンマルワイク率いるオーストラリアはやはりパスワークを重視しているよう。特にゴールキーパーからパスをつなぐというスタイルは変わっていないのだが、これがもう見ていてハラハラドキドキ。いや、ウチの(マリノスの)飯倉、貸してあげようか? そう思ってしまうくらい、ぎこちない。
●とはいえ、守備になればオーストラリアは堅い。フランス相手によく耐えた。前半をスコアレスで乗り切る。しかし後半13分、リズドンのスライディングタックルがグリーズマンの足にひっかかってPK。判定には今大会から導入されたビデオ判定が活用されたのだが、うーん、これってスロー再生してもかなり微妙。ともあれ、グリーズマンがPKを決めてフランスが先制。後半17分、今度はフランスが自陣ゴール前でハンドしてしまい(これは明白)、オーストラリアがPKを獲得。ジェディナクのキックは甘いコースに飛んだが、キーパーは逆に飛んでいた。これで同点。後半36分、フランスのポグバのシュートがクロスバーを叩く。ボールはいったん下に落ちてから枠外に跳ね返った。ゴールラインテクノロジーの判定によりゴールが認められてふたたびフランスがリード。これが決勝点となって2対1でフランスが勝った。ボール支配率は半々程度。アジア勢が強豪相手に勝点1を得るかと期待したが……。
●フランスは2点ともテクノロジーの助けで得たゴール。1点目のPKはあまり納得できない。2点目はもちろん疑いもなくゴールなのだが、あれがゴールラインを超えるかどうかは運の世界だろう。昔は主審の判定に委ねられていた運が、今は真実という判定に委ねられているのであって、どちらも運には違いないというのがワタシの理解。サッカーではしばしば幸運の女神が弱いほうに味方することがあるが、同じ回数だけ、強いほうにも味方しているのだという当然のことに思い当たる。つまり、一言でいえば、悔しい。
●メッシのアルゼンチンは、前回のEUROで躍進を遂げたアイスランドと対決。たくましい大男たちが集まるアイスランド代表は、ひたすらシンプルで力強い。小国の代表でありながら大国を打ち破る姿が共感を呼ぶ。が、どうなんだ、このサッカー、おもしろいのか? 好感度は高いけど、正直いって、ワタシはぜんぜんおもしろくない。一方、アルゼンチンはスペクタクルだ。パスワークに酔いしれるように狭いところを通して、つないで、突破する。メッシは相変わらずうまい。しかしプレイはすっかり枯れていて、極限まで最適化された効率的フットボール。前半19分、ロホのミドルシュートを、アグエロが足元でぴたりとトラップして(人間離れした超絶技巧!)、一瞬で反転してシュート。先制ゴール。これで楽勝かと思いきや、すぐ後の前半23分、アイスランドのダイナミックな左右の揺さぶりから、こぼれ球をフィンボガソンに蹴り込まれて同点。その後、アルゼンチンはほれぼれするような球回しを見せるのだが、アイスランドの堅い守備を崩せず。パスは回るがシュートが遠い。
●結局、アルゼンチンは74%という極端なボール支配を得ながら、1対1でドロー。なにかこう、みんながメッシに遠慮して安全なプレイを続け、一方でメッシはムダのない職人芸の世界に耽溺しているように見えてしまう。なるほど、これだけタレントがそろいながらアルゼンチンが南米予選であわや敗退直前まで追い込まれたのもなんとなくわかる。気が付けばベテラン化も著しい。このチームには、だれか火をつける存在が必要。求む、空気を読まない若者。
フランス 2-1 オーストラリア
娯楽度 ★
伝説度 ★★
アルゼンチン 1-1 アイスランド
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★