●ワールドカップ期間中でも演奏会はある(そりゃそうだ)。20日はトッパンホールで「読響メンバーによるシュポーアの九重奏」。普段はなかなか聴けない室内楽曲をたくさん聴けるありがたいプログラム。メンバーは長原幸太(ヴァイオリン)、鈴木康浩(ヴィオラ)、富岡廉太郎(チェロ)、瀬泰幸(コントラバス)、片爪大輔(フルート)、北村貴子(オーボエ)、金子平(クラリネット)、岩佐雅美(ファゴット)、日橋辰朗(ホルン)という読響の名手たち。曲は一曲目にストラヴィンスキーの「プルチネッラ」編曲版が予定されていたのだが、権利上の都合によりプーランク(エマーソン編)の木管五重奏のためのノヴェレッテ ハ長調とエネスコの弦楽三重奏のためのオーバード(朝の歌)に変更。続いて、プロコフィエフの五重奏曲ト短調、R.シュトラウス(ハーゼンエール編)の「もうひとりのティル・オイレンシュピーゲル」、ヴィラ=ロボスの「ジェット・ホイッスル」、シュポーア(シュポア)の九重奏曲ヘ長調。
●「もうひとりのティル」、存在は前々から知ってはいても実際に生で聴いたのは初めて。この曲に欠かせないホルンを含めて、5人だけのミニミニ交響詩。相当な力技ではあるけど、ここまで小さくしても原曲のエッセンスが保たれていることに驚く。ヴィラ=ロボス「ジェット・ホイッスル」はラテン的カッコよさで満たされた佳品。メインのシュポーアの九重奏は4楽章構成で、室内楽編成によるロマン派交響曲のような趣。曲自体はメンデルスゾーンをいっそう穏健にしたような作風で、録音で聴くと少し微温的かなと感じていたのだが、実際に聴いてみると思った以上にソロイスティックで、精彩に富んだ演奏のおかげもあって聴き映えがする。あとは人の好さそうなユーモアが吉。楽しい。存命中にシュポーアが手にした名声の大きさに合点がいく。
June 23, 2018