●「ナイジェリア対アルゼンチン……って、また?? いったいこのカードをなんどワールドカップで見ているのだろうか」と4年前にここに書いたが、またまたこのカードが実現してしまった。2試合を終えて、ナイジェリアは勝点3、アルゼンチンはわずか勝点1。アルゼンチンがグループリーグを勝ち抜けるためには、最低でも勝利が必要。そして同時刻のクロアチア対アイスランドでアイスランドが勝ってしまうと、アルゼンチンは得失点差でアイスランドを追い越すゴール数が必要になる。ちなみにクロアチアはすでに決勝トーナメント進出を決めているので、大胆に選手を入れ替えて3戦目に臨んでいる。アルゼンチン、大ピンチ。
●本当は名監督なのに選手たちからの信頼を失ったと伝えられるサンパオリ監督。チームは空中分解を起こしているというが、ともかくスタメンを変えてきた。アグエロはベンチに、イグアインとディ・マリアが先発。大チョンボをしたキーパー、カバジェロを下げてアルマーニを起用。スタジアムはアルゼンチン・サポでいっぱい。試合が始まると猛然とアルゼンチンが攻撃する。前半14分、アルゼンチンはメッシが神トラップから右足でのゴール。喜ぶアルゼンチン。ナイジェリアは若いチームだが、爆発的なスピードも見られず、押される展開。前半はアルゼンチンが1対0でリード。もう一方のクロアチアとアイスランドは0対0。
●後半4分、ナイジェリアのコーナーキックの場面で、競り合いでマスチェラーノがファウルを取られてPK。主審はチャンピオンズリーグ決勝の笛を吹いたこともあるトルコのジュネイト・チャキル。マスチェラーノは猛抗議。ここでVARから助言があって、主審はビデオを確認。どうだろう、たしかにマスチェラーノは手を使って相手を抑える瞬間があったが、強く引っ張っているわけでもないし、慣習的にはこの程度は見逃すのでは……と思ったが、主審は判定を変えずにPK。まあ、ファウルはファウルかもしれないが。今大会、ビデオ判定のおかげか、とてもPKが多い。モーゼスが決めて同点ゴール。こうなると、がぜん元気が出てくるのがナイジェリア。ムサのキレキレの突破など、アルゼンチンを苦しめる。
●後半31分、またもVARの場面がやってくる。アルゼンチンの守備の場面で、ロホが頭でボールをクリアする際に、ミスをしてボールが手に当たってしまいPKの疑いが。主審はPKを取らなかったのだが、VARの助言によりビデオ判定に。もしPKならアルゼンチンは万事休す。映像を見るとたしかにまあ、当たってはいる。ヘディングをミスった結果、ボールが手に触れたという偶発的な事故なので、これでPKというのはどうなのか。と思っていたら、主審は判定を変えずにセーフ。え、今大会の流れだと、PKかと思ったけど? 判定は妥当だとは思うが、このあたりの基準がわかりづらい。
●その後、アグエロも入れてアルゼンチンは攻勢を強めるが、ゴールが遠い。イグアインが決定機を外す。後半41分、右サイドからメルカドがクロスを入れると、中央でロホがきれいな右足のボレーでゴール。なぜそこにディフェンダーのロホが! スタジアムは歓喜の渦に。アルゼンチン・サポの子供が泣きじゃくっている。と思ったら大人も泣いている。こんな環境でプレイする選手たちの重圧はどれほど恐ろしいものか。しかしアイスランド対クロアチアは1対1なので、もしもアイスランドが最後に決勝ゴールを上げたりしたら、このアルゼンチンの喜びも無に帰してしまうのだが。アルゼンチンは追加点を獲りに行くのではなく、時計を進めるプレイ。むしろカウンターでヒヤリとする場面も。どうなるのか、やきもきしていると、クロアチアがゴールを決めてリードしたという情報が。アルゼンチンは救われた。そのまま試合は終わって、アルゼンチンはかろうじて2位で勝ち抜け。ベンチでガッツポーズを取っていたサンパオリ監督は、歓喜の輪に加わらずすぐにロッカールームに消えた。なんという孤独。チリを南米王者に導いたあの名将が……。
ナイジェリア 1-2 アルゼンチン
娯楽度 ★★★★
伝説度 ★★