●30日夜は浜離宮朝日ホールのチェンバロ・フェスティバル in 東京 第5回「バッハへの道、バッハからの道」へ。3日間で5回の演奏会と関連企画が集中開催されるチェンバロのためのフェスティバル。会場内にはチェンバロやヴァージナル、クラヴィコードなども展示されていた。
●第一夜の公演には植山けい、大井浩明、曽根麻矢子、野澤知子、渡邊順生のチェンバロ奏者たちが代わる代わる登場。バッハとC.P.E.バッハの作品(渡邊)に続いて、リゲティが書いたチェンバロ作品3曲をその着想のもととなった作品と並べて聴くという趣向で、パッヘルベルのカノン+リゲティのハンガリー風パッサカリア(曽根)、クープランのティク・トク・ショク+リゲティのコンティヌウム(植山)、ストラーチェのチャコーナ+リゲティのハンガリー風ロック(野澤)。リゲティの機知とユーモアが伝わってくる。
●後半はまず古川聖の「アリアと18の変換~ゴルトベルク変奏曲に基づく」(大井)。音楽祭の委嘱作品、世界初演。冒頭にバッハのゴルトベルク変奏曲のアリアが演奏されて、以下、オリジナルの変奏がなんらかのアルゴリズムによって変換されたと思しき曲が続く。これがもとの変奏の原型をかなりの程度まで留めながら、歪んだり、ずれたり、削られたりした変種ゴルトベルクみたいな音楽。頭のなかで想起されるバッハの原曲と実際に耳に聞こえている変種とがコンフリクトを起こしてしまうという逸脱感が痛快。うっかり左右のコンタクトレンズを逆に入れてしまったかのような落ち着かなさ。最後に帰ってくるアリアも変種になっていた。まるでじわじわと感染が広がったみたいに。最後はバッハのブランデンブルク協奏曲第5番。曽根麻矢子のチェンバロと、阪永珠水のヴァイオリン他によるチェンバロ・フェスティバル・アンサンブルの演奏で。晴れやかで躍動感あふれるバッハ。
July 4, 2018