●3日はすみだトリフォニーホールへ。11月9日の公演に先立って、ファジル・サイが新日本フィルと共演する「皇帝」&「メソポタミア」制作発表記者会見が開かれた。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」とファジル・サイ作曲の交響曲第2番「メソポタミア」(日本初演)が演奏される。指揮はイブラヒーム・ヤズィジ。写真は左より「メソポタミア」でテルミンのソロを担当する滝井由美子、ハサン・ムラット・メルジャン駐日トルコ大使、ファジル・サイ。写真の左側にmoogのロゴが見えるが、これがテルミン。
●ファジル・サイの交響曲第2番「メソポタミア」は、120人からなる大編成のオーケストラにピアノ、バスリコーダー、バスフルート、パーカッション、テルミンのソロを要する約55分の大作。ピアノはもちろんサイ自身が弾く。チグリス川とユーフラテス川の大河に挟まれた文明発祥の地を題材として、歴史的な視点に現代の中東とトルコの時事的な問題、テロや戦争といったテーマを絡める。曲は全10楽章からなり、サイによれば「独自のストーリーを持ったオーケストラ・オペラ」なのだとか。バスリコーダーとバスフルートのふたつの独奏楽器はメソポタミア平原のふたりの兄弟を、テルミンが守護天使を表現するといったように。バスリコーダーを使うのはトルコの民族楽器に似た破裂音を出せるからという。
●会見の合間には滝井さんによるテルミンのデモンストレーションや、サイ作曲の「ブラックアース」の生演奏も。サイのオーケストラ作品では、交響曲第1番「イスタンブール交響曲」がすでに80回以上も演奏されているという人気ぶり。それに比べると「メソポタミア」は大編成のうえにソリストが何人も必要とあってまだ演奏機会は多くないが、それでもイスタンブールで初演されて以来、ヨーロッパ、カナダでも再演されているそう。アジアでは今回が初めて。各楽章に「メソポタミア平原のふたりの子供」「太陽」「月」「銃弾」「戦争について」といったストーリー性を想起させる標題が付いている。サイ「作曲にあたっては常にストーリーがインスピレーションを与えてくれる。物語や詩や都市など。モーツァルトやベートーヴェンのソナタであっても、私の頭のなかではストーリーを感じながら演奏している」
September 4, 2018