●ドイツの放送オケの名前がどんどん略号だらけの長い名前に変わってしまい、一気になじみの薄い感じになってしまったが、NDRエルプフィルが次期首席指揮者アラン・ギルバートとともに来日。旧称は北ドイツ放送交響楽団。前回はトーマス・ヘンゲルブロックの指揮で聴いた。北ドイツ放送響とNDRエルプフィルではぜんぜん名前のイメージが違うけど、でもそれくらいイメージを一新させる名前がこのオーケストラにはふさわしいのかも。とても機能的で、豊麗で、くっきりしたサウンドを持つ国際色豊かなオーケストラ。すばらしくうまい。特に弦は強力。こちらもすっかり定着しつつある対向配置。
●プログラムはワーグナーの「ローエングリン」第1幕への前奏曲、マーラーの交響曲第10番よりアダージョ、ブラームスの交響曲第4番。今回のプログラムは前任者のヘンゲルブロックが決めたものなんだけど、これをアラン・ギルバートがそのまま引き継ぐことにしたというのがおもしろい。前半2曲、ワーグナーとマーラーはいかにもそのままつなげて演奏しそうな選曲で、もしそうなら効果抜群だったと思うが、普通に一曲ずつ演奏したのであった。一曲目の時点でハープに奏者が座っていなかったから、まあ、つながるわけがないんだけど(遅刻者も入場させなければならないし)。マーラーは細部まで彫琢されて、恐るべき完成度。ギルバートとNDRエルプフィルの音楽は常に明快、明瞭。その明瞭さを保ったまま、豊かなパッションが注ぎ込まれて、大きなうねりを作り出すところが魅力。後半のブラームスの4番はパッションの比重が一段と高まって、まれに見る熱気にあふれた名演に。どれだけ熱くなっても形が崩れないという安心感。アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第6番。自在で遊び心あり。カーテンコールの途中で入ってきた奏者たちから察するに、アンコールはもう一曲、用意していた風でもあったんだけど、この一曲でおしまい。いずれにせよ、本編のブラームスの4番で満ち足りていた。
November 5, 2018