●10日は東京オペラシティでジョナサン・ノット指揮東京交響楽団。モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、ストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲(神尾真由子)、ベートーヴェンの交響曲第4番というプログラム。古典~新古典~古典の変則古典派プログラムというべきか。弦楽器はいつもの対向配置で、モーツァルトではグッっと刈り込んでほとんど室内楽的。ストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲では切れ味鋭いソロ。以前に聴いたリゲティと同様、ソリストと20世紀音楽の愛称のよさを感じる。カッコよさ、ユーモア、かわいさが一体となった稀有な名曲と再認識。
●圧巻は後半のベートーヴェンの交響曲第4番。これだけ精彩に富んだベートーヴェンを近年聴いたことがあったかなと思うほど。スピード感、ダイナミズム、スリル、今まさにそこで音楽が生み出されているという生々しさ、アンサンブルの愉悦、火花の散るような指揮者とオーケストラのやりとり。まれに聴く名演に心のなかで快哉を叫ぶ。
●ベートーヴェンの交響曲の緩徐楽章のなかでいちばん好きなのは、この第4の第2楽章。奇跡的な傑作。この曲についていつも言及されるシューマンの有名な言葉「ふたりの巨人にはさまれた可憐な乙女」というのは今日あまり共感されないと思うけど、当てはまるとすれば第2楽章だろうか。タン、タタン、タタン、タタンと執拗に刻まれるリズムに不気味さがあって、わりと不穏なタイプの乙女だと思う。精妙絶美、でも微妙に怖くて妖しい。
November 12, 2018