November 20, 2018

映画「私は、マリア・カラス」(トム・ヴォルフ監督)

映画「私は、マリア・カラス」
●プレス向け試写でドキュメンタリー映画「私は、マリア・カラス」(トム・ヴォルフ監督)を観た。えっ、まだカラスの映画が作られるの?とは思ったが、未公開映像がたくさん。監督はロシア生まれフランス育ちの若い映像作家。カラスの歌声に感銘を受け、世界中を飛び回って未公開の資料や映像、音源を探し、さらにはカラスの近親者や関係者たちに60時間以上のインタビューを敢行して、初の長編映画となる本作を作りあげたという。
●一言でいえば、邦題通りの「一人称のドキュメンタリー」とでもいえるだろうか。映像のほとんどはカラス自身を映したもので構成されており、カラスの視点で語られているのが特徴。伝説的なスターとなるが、ローマ歌劇場での途中降板がスキャンダルになり、海運王オナシスと出会い華やかなセレブの生活を送るも、ある日オナシスはジャクリーン・ケネディと結婚してしまう……。プライベートな映像や手紙が公開されていて、かなり赤裸々。そもそもこの時代の人でこんなにプライベート映像が残っているということが驚き。必然的に伝説の歌手というよりはひとりの強くて弱い女としてのカラスに焦点があたる。手紙に「オナシスと9年も付き合っていたのに、結婚を新聞で知りたくなかった」とか書いていて、痛々しい。ニューヨークでの本人のインタビュー映像からも、いろんな葛藤が伝わってくる。あと、今では考えられないことだが、メトの復帰公演のチケットを求めて早朝から若い人々が長蛇の列に並んでいる様子は印象的。
●次から次へと画面上に有名人が出てくるのだが、逐一説明は入らない。メネギーニ(元夫)とか、知らなかったらマネージャーのオッサンくらいにしか見えないと思う、途中までは。
●クラシックの音楽家で死後も延々と語られ続ける双璧はカラスとグールド。いったい本が何冊出ているだろうか。共通項は(ほぼ)みんな生では聴いていないということ。
●12/21(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー。配給はギャガ。

PHOTO © 2017 - Eléphant Doc - Petit Dragon - Unbeldi Productions - France 3 Cinéma

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