●1日はトッパンホールでクラリネットのアンドレアス・オッテンザマー、ヴァイオリンの郷古廉、ピアノのホセ・ガヤルドの室内楽。軸となるのはオッテンザマーだが、トリオあり、デュオありで実に多彩なプログラム。前半はドビュッシーのクラリネットのための第1狂詩曲、ヴァイオリン・ソナタ、プーランクの「城への招待」、後半はバルトークのルーマニア民族舞曲、ブラームスの6つの小品より間奏曲op118-2(クラリネット+ピアノ版)、ブラームスの5つの歌曲op105より「歌のしらべのように」(クラリネット+ピアノ版)、レオ・ヴェイネルの2つの楽章、バルトークの「コントラスツ」。3人が全員で演奏するのはプーランクとバルトーク「コントラスツ」の2曲。オッテンザマーのクラリネットは今回も天衣無縫、のびやかで華麗(しかもイケメン。というタグがこの人にはもれなく付いてくる)。郷古廉のヴァイオリンは芯の強い美音で、集中度が高く、熱気のこもったドビュッシーのヴァイオリン・ソナタがとりわけ聴きもの。
●ドビュッシーの第1狂詩曲、この曲は「第2」がないのに「第1」と呼ばれるヘンな曲。これは旧作「海」へのセルフパロディというか、サブセット版みたいな曲だと思う。ピアノとクラリネットだけど、波や風、光を表現している、たぶん。パリ音楽院卒業試験曲。プーランクの「城への招待」、この編成ではなかなか聴けない曲のはずだが、聞き覚えがある。いつ聴いたんだろう? これはユーモラスというか、「すべるとわかってるギャグを堂々とやる」的なベタなノリの曲であるという理解。ブラームスのop118-2は、本来ピアノだけで完結されている作品を、ピアノとクラリネットで演奏するのが不思議な感じ。もっとも楽しめたのは最後のバルトーク「コントラスツ」。終楽章はヴァイオリンの持ち替え(一台はスコルダトゥーラされている)とクラリネットの持ち替えが出てくるという趣向になっている。そうだったんだ。アンコールはショスタコーヴィチの5つの小品より第1曲のプレリュードと第4曲のワルツを3人で。オッテンザマーが楽譜を忘れて(?)登場してしまい、「少し待ってください」と日本語で述べてからいったん袖に引っ込んで、タブレット端末を持って登場して舞台上で懸命に検索するという一幕も。場が和んだ。
December 3, 2018