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December 13, 2018

新国立劇場「ファルスタッフ」(ジョナサン・ミラー演出)

ファルスタッフビール●12日は新国立劇場でヴェルディの「ファルスタッフ」。ジョナサン・ミラー演出の再演。カルロ・リッツィ指揮東京フィル、キャストはロベルト・デ・カンディア(ファルスタッフ)、マッティア・オリヴィエーリ(フォード)、エヴァ・メイ(フォード夫人アリーチェ)、村上公太(フェントン)、幸田浩子(ナンネッタ)、エンケレイダ・シュコーザ(クイックリー夫人)他。17世紀オランダ絵画にインスピレーションを得たという舞台でくりひろげられる正調ファルスタッフ。笑い成分はほどほどで、バランスの取れた演出。リッツィの指揮は勢いがあって、大らか。昼公演ということもあってか、リラックスして楽しむべき「ファルスタッフ」だった。フォード役がお気に入り。歌もスマートなルックスも。
●ヴェルディの作品のなかで、もっとも愛すべき作品というか、共感できるのが「ファルスタッフ」。こういう太っちょで野卑でルール無視、でも憎めない人物って、現代社会ではなかなか許容されがたくなってきてると思うんだけど、そういう意味ではオッサン・ファンタジー。そして、この作品は肉オペラでもある。肉礼賛。ビバ脂肪。ファルスタッフは言う。「肉をつければモテる」。それだけじゃない。テムズ川にドボンと落とされても、肉がついていたから助かった。たしかに脂肪が多いと人間は水に浮きやすいと、水泳サイトを見ると書いてある。もしファルスタッフが糖質オフとか脂質オフなんてやってたら、彼に第3幕が訪れることは永遠になかった。肉は命を救う。
●台本はボーイト。原作はシェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」をベースに「ヘンリー四世」が取り入れられているということだが、終場は「夏の夜の夢」を想起させずにはおかない。真夜中の森、妖精の女王、複数カップルの結婚式というモチーフはまさしく。後に書かれるブリテンのオペラを連想する。ボーイトの台本でひとつ不足を感じるのは、フォードがフォンターナを騙ってファルスタッフにアリーチェを口説いてほしいと依頼するところで、あの展開は唐突で不自然だと思う。原作の「ウィンザーの陽気な女房たち」のあらすじを読むと、もう少し自然な流れがありえたようにも。
●正確な訳詞は覚えていないんだけど、「キャベツの芯で撃たれる」みたいな言葉が出てくるじゃないすか。あれってなにか成句とかになってるんだろうか。豆腐の角に頭をぶつけて……みたいな?(違うか)。ふと思い立って「キャベツの芯」で検索してみても、クックパッドとかのレシピしか出てこない。とりあえず、キャベツの芯には栄養があって、工夫次第でおいしく食べれることはわかった。