●17日は新国立劇場で2019/20シーズンラインアップ説明会。今回もオペラ、舞踊、演劇の三部門共通の説明会が大勢のプレス関係者を集めて行われ、その後、部門ごとにわかれて各芸術監督を囲んで懇談会として質疑応答が続けられた。写真は大野和士オペラ芸術監督。で、オペラの2019/2020シーズン・ラインアップはこちら。注目の新制作はチャイコフスキー「エウゲニ・オネーギン」、ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」、ヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」。
●以下、大野さんの言葉をさしはさみつつ紹介すると、「この劇場のレパートリーにはロシア・オペラがない。その第一弾となるべき作品」ということで「オネーギン」。モスクワ・ヘリコン・オペラのインテンダントで斬新さで知られるというドミトリー・ベルトマンの演出。それと「レパートリーとしてのベルカント作品が少ない」ことから、ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」。こちらはダニエル・ドゥ・ニースの登場がうれしい。「彼女がいるだけで稽古場の雰囲気が一変してしまうほどの稀有な才能を持ったスーパースター」。ヴィツィオーリ演出のプロダクションは、スカラ座で94年に初演されて以来、各地で上演されている人気作。これを新国立劇場が購入した。
●昨年から発表されていたように、1年おきにダブルビルとバロック・オペラに取り組みたいということで、2019/20シーズンはバロック・オペラの年。演目はヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」。指揮はリナルド・アレッサンドリーニ! 東フィルがピットに入る。ロラン・ペリーの演出で、11年にパリ・オペラ座で上演されて大成功をおさめたプロダクション。こちらはレンタルになるが、「次からは自前で制作したい」。
●「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は東京文化会館とともに展開する「オペラ夏の祭典 2019-20 Japan↔Tokyo↔World」の一環で、「トゥーランドット」に続く第2弾になる。新国立劇場、東京文化会館、ザルツブルグ・イースター音楽祭、ザクセン州立歌劇場の共同制作。演出はイェンス=ダニエル・ヘルツォーク。大野和士芸術監督自らが指揮する唯一の演目。
●また、来シーズンは「特に指揮者の質にこだわった」ということで、レトーニャ、レプシッチ、トリンクス、カリニャーニ、ロヴァーリス、アッレマンディ、オルミら、「今の世界の歌劇場を賑わせている人々」を選んだという。
●ということで、全体の大きな方向性としては、今シーズンから継続してレパートリーの多様化、拡充に向けて、一歩一歩前進していることを実感。なにしろオペラはオーケストラと違って、監督が変わったからといって翌シーズンからガラッとレパートリーを刷新するというわけにはいかない。新しい演目をひとつを増やすだけで大変。もっとも、再演は「椿姫」「ラ・ボエーム」「セビリアの理髪師」「コジ・ファン・トゥッテ」「ホフマン物語」「サロメ」。シーズン全体で眺めれば、意外と落ち着いたラインナップになったという感も。
●特別企画として目をひいたのは、2020年8月に新制作される「子供オペラ」。渋谷慶一郎作曲、島田雅彦台本で、演出は新国立劇場演劇芸術監督である小川絵梨子、指揮は大野和士。子供たちの合唱が主役で、これに「AIロボット」が絡む。「新しいオペラのあり方という意味でも実験的な作品と位置付けている」。この公演に関しては、また別途、発表会が開かれるそうなので、詳細はそこで。これは期待大。
January 18, 2019