January 21, 2019

トゥガン・ソヒエフ指揮N響、山田和樹指揮読響

●17日はサントリーホールでトゥガン・ソヒエフ指揮N響。プログラムはフォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」、ブリテンの「シンプル・シンフォニー」、リムスキー・コルサコフの交響組曲「シェエラザード」。ベルリン・フィルの首席ヴィオラ奏者、清水直子さんが客演。ソヒエフの筆圧の強いタッチで描かれる物語性豊かなプログラム。どの作品もスケールの大きな表現で、ブリテンのようなかわいい曲も大柄でドラマティックな音楽に生まれ変わる。「シェエラザード」はそんなソヒエフの特徴が生かされた壮大なスペクタクル。アラビアンナイトの幻想性や猥雑さよりも、壮麗でパワフルな音のドラマが前面に打ち出されていた。
●今月来月はなぜか「シェエラザード」がよく演奏される。すでに終わった山田和樹指揮読響に今回のソヒエフ指揮N響、これからバッティストーニ指揮東フィル、ムーティ指揮シカゴ交響楽団と続く。関西でもソヒエフ指揮N響の大阪公演があって、岩村力指揮兵庫芸術文化センター管弦楽団、大植英次指揮大阪フィルが続く。日本の冬を彩る謎の「シェエラザード」現象。
●もうひとつ、18日はサントリーホールで山田和樹指揮読響。とても刺激的なプログラムで、前半に諸井三郎「交響的断章」、藤倉大のピアノ協奏曲第3番「インパルス」(小菅優独奏/共同委嘱作品/日本初演)、後半にワーグナーの舞台神聖祭典劇「パルジファル」第1幕への前奏曲、スクリャービンの交響曲第4番「法悦の詩」。聴けばわかるのだが、これはプログラム全体が官能性や陶酔感といったキーワードで貫かれた「快楽プロ」。そして前後半が微妙に相似形をなしている。諸井三郎作品ではリヒャルト・シュトラウス的な後期ロマン派風の豊麗な響きが横溢する。軽くフランク風味も。藤倉大の新作は、きらめき飛び跳ねるような独奏ピアノにオーケストラが寄り添って、脈動する。さらにソリスト・アンコールに「ウェイヴス」。これもまた脈打つような波。後半はワーグナーとスクリャービンによる宗教的な恍惚感と妖しいエクスタシー対決。スクリャービンはオケが気持ちよく鳴りきってパワフルなクライマックス。緻密な響きの彫刻というよりは、よりフィジカルな、作曲者の煩悩の実体化といった感。
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●お知らせをひとつ。ONTOMO1月特集「アニバーサリー」に「だれか祝ってほしい、スッペの生誕200年を」寄稿。ご笑覧ください。

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