●23日はサントリーホールでアンドレア・バッティストーニ指揮東フィル。デュカスの交響詩「魔法使いの弟子」、ザンドナーイの「白雪姫」、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」という、一種のおとぎ話プロ。こういうテーマ性のある選曲だと、がぜん聴きたくなる。ザンドナーイの「白雪姫」はまったく初めて聴く曲。録音でも聴いたことがなく、存在すら知らなかった。よく考えてみると、「白雪姫」のストーリー自体がうろ覚えで(毒リンゴが出てきて、あとは継母が「鏡よ鏡よ」って言うんだっけ?←なげやり)、曲と場面の対応を想像するのも難しいのだが、それでも曲は楽しめた。明快で朗らか。もともとはバレエ用で1939年作曲なんだとか。レスピーギを思わせるところも。モダンな成分は感じられないが、冒頭のクラリネット・ソロ(白雪姫の主題?)は、白い「春の祭典」って感じもしなくはない。
●リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」は快演! これぞ「シェエラザード」という語り口の豊かさで、バッティストーニの面目躍如。芝居っけがあるのが吉。エキゾチックで猥雑なアラビアン・ナイトの世界。この曲の理想形にはいろんなスタイルがあるとは思うが、自分のイメージにぴったりなのは、こんなふうにけれん味があって、聴かせどころのソロが「オレがオレが」の腕自慢大会になるような演奏。クラリネットの大活躍ぶりが印象的だった。
●ところで大人が「千一夜物語」を読む場合、バートン版にするか、マルドリュス版にするか等、ブルックナーさながらの「版の問題」があると思う(あるいは一種の原典版としての東洋文庫版とか)。自分が読んだことがあるのは、かつて入手容易だったマルドリュス版のごく一部と、国書刊行会の「バベルの図書館」で出ていたガラン版くらいか。で、ちくま文庫のマルドリュス版は長期品切状態になっていたようなのだが、いつの間にかKindle版で復活している模様。一方、同じちくま文庫から現在はバートン版が刊行されていて、こちらは紙の本で購入できるが、Kindle版はない。紙かKindleかで入手できる版が違っているという不思議な状況になっている。リムスキー=コルサコフが手にした「千一夜物語」はどの版だったのだろうか。
January 24, 2019