February 1, 2019

リッカルド・ムーティ指揮シカゴ交響楽団のヴェルディ「レクエイム」

●31日は東京文化会館でリッカルド・ムーティ指揮シカゴ交響楽団。プログラムはヴェルディ「レクエイム」のみ。ムーティ&シカゴの十八番みたいな演目であり、一方で主役は東京オペラシンガースでもある。パワフルで輝かしいオーケストラのサウンドと精緻でドラマティックな合唱の共演に改めて作品の真価に触れた思い。シカゴ交響楽団のブラスセクションは余裕を感じさせる安定感。ムーティの音楽はかつてほどではないにしてもキレがあり、加えて重々しさが目立ってきた。独唱陣はソプラノにヴィットリア・イェオ、メゾ・ソプラノにダニエラ・バルチェッローナ、テノールにフランチェスコ・メーリ、バスにディミトリ・ベロセルスキー。メーリの第一声の力強さにすでに感嘆。
●この曲、レクイエムではあるけど、オペラ的とはよく言われるところ。自分もこれは台本のないオペラだと思って聴いている。典礼的ではなく劇場音楽風に感じるのは、そこで扱っているのが悲しみだったり怒りだったり感謝だったりといった普遍的な人間感情であって、特定の宗教の枠に留まるものではないから、なんだろう。根源的な人間感情を扱ったドラマはどんな文脈においても有効で、時代も地域も超越した長いリーチを持ちうる。ヴェルディのオペラがまさにそう。ヴェルディって台本の選択に秀でていて、決して古びることのない人間ドラマを扱ったものが多いじゃないすか。シェイクスピアに対する共感の深さにしてもそうだけど、アルプスの反対側でワーグナーが超越的で観念的なテーマに挑んでいたのとは対照的。生き方を見ても、とても実際的で地に足が付いた人なんだろうなと思う。そういう意味ではヴェルディの「レクイエム」は、ベートーヴェン「第九」なんかと同じで、神さま出てくるけどみんなウェルカムだよっ!って招かれてる感じがある。
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●ONTOMOにロームミュージックファンデーションの取材記事を寄稿。同財団から支援を受けて留学した現在大活躍中のヴィオラ奏者、田原綾子さんにお話をうかがった。


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