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April 26, 2019

藤田真央ピアノ・リサイタル、河村尚子のベートーヴェン ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.3

●25日、まず昼は浜離宮朝日ホールで藤田真央ピアノ・リサイタル。11時30分開演で休憩あり90分のランチタイムコンサート。プログラムは前半にモーツァルトのピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330、チャイコフスキーのドゥムカ、後半にショパンの即興曲第1番~第3番と幻想即興曲、スクリャービンのピアノ・ソナタ第2番「幻想ソナタ」。モーツァルトを敬愛したチャイコフスキー、ショパンに心酔したスクリャービンという各セットからなる構成で、ランチタイムコンサートとはいえ聴きごたえのあるプログラム。みずみずしく、キレのあるピアノを堪能。特に最初のモーツァルトと最後のスクリャービンが印象に残った。モーツァルトは予想以上に情感豊かでしっとりした味わい。耽美な第2楽章から軽やかな第3楽章へと飛翔するコントラストの鮮やかさ。スクリャービン作品から浮かぶのは、まだオカルトに傾倒する以前の才気走った若者の姿。ドビュッシーに先駆けた海と波、光と風の音楽。演奏後、それまでの硬い表情からは一転して、マイクを持ってにこやかトーク。昼の公演なので朝6時起きが大変な課題だったけどちゃんと起きれてよかったとか、自分で決めた今日のプログラムはすばらしいと自画自賛するなど、真央節全開で客席の心をぐっとつかんだ。アンコールはリストの「愛の夢」第3番。
●夜は紀尾井ホールで河村尚子のベートーヴェン ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.3。今回はソナタ第26番「告別」、第27番、第29番「ハンマークラヴィーア」。シリーズ前回に続いて、充実のひととき。強靭なダイナミズム、構築美とパッション、決して予定調和に留まらない音楽の生々しさ。「ハンマークラヴィーア」はその巨大さや複雑さに圧倒されるんだけど、その向こうにある種の慈しみみたいなものも感じる。使用ピアノは奏者の希望によりベーゼンドルファー280VC。アンコールはないかなと思いきや、「告別」の第3楽章をもう一度。シリーズ次回での「再会」を期して、ということか。
●さて、明日からは暦の上では10連休になってしまう。というか、紙の手帳では4月30日から5月2日までは平日ということになっているのだが(印刷時にはまだ決まってなかったから)、5月1日が天皇の即位の日で祝日に設定されたことで、まさかの10連休が現実に。そして、休みが増えればうれしい人と、休みが増えると苦労も増える人とでぜんぜん話がかみ合わないのが大型連休。
●というわけで、連休中は年末年始と同様に当欄も不定期更新モードで。休む人も働く人も、よいゴールデンウィークを。