●東京国際フォーラムでラ・フォル・ジュルネTOKYO2019が開催中。初日と二日目を終えて、備忘録的に。
●3日の「0歳からのコンサート」はミハイル・ゲルツ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィアの演奏でチャイコフスキーの「くるみ割り人形」。これは自分史上、過去最高の「0歳からのコンサート」だった。司会の塚本江里子さんがすばらしい。「くるみ割り人形」が一種の音楽物語として再構成されていて、塚本さんの語りで進行するのだが、ところどころ客席といっしょに音楽に合わせてジェスチャーを入れたり、一部では歌ったりする。なにしろオペラの勉強を積んだ「歌のおねえさん」なので、このコンサートには最強最適。一般的なアナウンサーの語りでは決してここまで伝えることはできない。「0歳からのコンサート」は始まったばかりの頃からいろんな議論を呼び、一時は縮小されたこともあったが、回を重ねてここまで練れてきたのかと感動。どんなに曲や演奏がよくても、ただ演奏するだけではうまくいかないことは明らか。ちなみに全席完売。
●ホールB7でチャイコフスキーのピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出」は、「出演者はルネからのサプライズ」とされていた公演。当日発表があるものと思いきや、なにも発表がない。会場まで行っても、掲示がないし、アナウンスもなくて、本当に出演者が袖から出てきて初めてだれが演奏するかを知った。「きっとフランスの若手奏者たちがトリオを組むのかな……」と思いきや、チェロにクニャーゼフ、ピアノにベレゾフスキー、ヴァイオリンにニキータ・ボリソグレブスキーという豪華布陣でびっくり。貫禄のトリオ。
●フロレンツ作曲の交響詩「クザル・ギラーヌ(赤照の砂漠)」という未知の曲を聴くためにウラル・フィルハーモニー・ユース管弦楽団の公演へ。指揮は代役のリオ・クオクマン。ウラル・フィルじゃなくて、ウラル・フィルのユース。これはアカデミー的な存在なんだろうか。曲が目当ててあってオーケストラはどこでも、という感じで足を運んだのだが、ユース・オーケストラを呼ぶのは妙手だと目から鱗。なるほど、ユースならどんな曲でもしっかり練習して、新鮮な気持ちで作品に取り組んでくれる。ぜんぜんこれでいい。合わせて演奏されたブルッフのスコットランド幻想曲では梁美沙の精彩に富んだヴァイオリンを堪能。
●ホールB7の「グランド・ツアー:ヨーロッパをめぐる旅」は、音楽祭のアンバサダーを務める別所哲也が語りを務める公演。演奏はアンサンブル・マスク、オリヴィエ・フォルタンのチェンバロと指揮。「グランド・ツアー」とはなにか等、いろいろと説明しないと一般的な日本人にはわからないハイブローな題材なんだけど、あえて説明的にせずに、わからないことがあってもわからないなりに楽しめるような構成になっていたと思う(ていうか、ワタシ自身がよくわかってない)。今回、LFJにしては古楽系の公演(特に器楽)が少なめなので、その点でも貴重。
●4日のホールCでは、フォーレのピアノと管弦楽のためのバラード(ペヌティエ)と、ドビュッシーのピアノと管弦楽のための幻想曲(ジョナス・ヴィトー)というなかなか聴けない2曲を一度に聴けた。ミハイル・ゲルツ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア。といっても、ドビュッシーのほうはつい先日、ヌーブルジェとノット指揮スイス・ロマンド管弦楽団で聴いたばかり。受けた印象はずいぶん違っていて、ヴィトーは雄弁。この曲、すごく「海」に似ている。ピアノと管弦楽のための「海」というか、「海」のピアノ協奏曲バージョンというか。華やか。
●会場は盛況。昨年よりずっと賑わっていると感じる。十連休効果?
May 5, 2019