●読響の新常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレがいよいよ登場。3プログラムを指揮して、さらには二期会の「サロメ」も続くという活躍ぶり。就任披露の定期演奏会は聴き逃したが、24日、サントリーホールでの名曲シリーズへ。曲はワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲、シューマンのチェロ協奏曲(ユリア・ハーゲン)、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。名刺代わりの3プログラムはいずれも独墺系のレパートリー。前任のカンブルランとはまた違った方向性が指示されている……といっても、カンブルランもかなり独墺系の音楽を取りあげていて、それがまた刺激的だったのではあるが。
●シューマンのチェロ協奏曲でソリストを務めたユリア・ハーゲンは、チェロのクレメンス・ハーゲンを父に持つ新星。ヴァイグレのやさしいサポートのもと、潤いのある美音を披露。鬱々とした情念渦巻くシューマンではなく、すっきりさっぱり。アンコールにバッハの無伴奏チェロ組曲第1番よりサラバンド。メイン・プログラムの「英雄」は、重々しいベートーヴェンになるのかと思いきや、予想外に明快ではつらつとしたベートーヴェン。冒頭の鋭く打ち付けるような和音連打からきびきびと音楽が進み、歯切れがよい。全体としては古風な要素も今風の要素も入ったハイブリッドといった感。コンビとしてはまだスタート地点に立ったばかりなので、これからさらに成熟度を高めていくにちがいない。客席の反応は上々。新時代への期待の高さを感じる。NHKの収録あり。
May 27, 2019