●30日はサントリーホールでアンドリス・ネルソンス指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団。恰幅もよくなって、ますます巨匠然としてきたネルソンス。まだ40歳とは。曲はブルックナーの交響曲第5番のみ。まずオーケストラの音色の美しさに感嘆。冒頭のニュアンスに富んだ弦からゾクッと来る。そして本当に豪快に鳴る。サントリーホールでこんなに鳴らすオーケストラは珍しい。伝統の重厚なサウンドというイメージよりも、もっと鮮烈で壮麗。おかげで宗教的な恍惚感というよりは、スペクタクルが前面に出た感。楽員が指揮者と一体となって攻める演奏だったので、精密さはやや犠牲になったかもしれないが、めったに聴けない凄演。終楽章は速めのテンポで驀進する対位法モンスター。
●ブルックナーの交響曲、第7番以降の磨かれた完成度に比べると、第5番はゴツゴツした手触りや労作感、人工美が前面に出ていて、工事中の教会っぽいというか、神さま外出中なところが共感できる。
●終楽章の最後、盛り上がりに盛り上がって、ネルソンスがびしっとポーズを決めて終わったところで、ブラボーが飛んでくるかと思いきや、客席全員ぐっとこらえて静寂。ネルソンスが虚を突かれたような表情に見えたのは気のせいだろうか。その後、大喝采、楽員が退出しても拍手が鳴りやまず、ネルソンスのソロ・カーテンコールへ。盛大なブラボー。
May 31, 2019