●2日は東京オペラシティでバッハ・コレギウム・ジャパン第133回定期演奏会「マリアの讃歌」。指揮は鈴木優人で、オルガンが鈴木雅明という形での父子共演。プログラムはマニフィカトで始まって、マニフィカトで終わった。オルガン独奏でブクステフーデの第一旋法によるマニフィカトとバッハの「前奏曲、トリオとフーガ」ハ長調BWV545/1, 529/2, 545/2で始まって、バッハのカンタータ第147番「心と口と行いと生活が」BWV147、休憩をはさんでカンタータ第37番「信じて洗礼を受ける者」BWV37、マニフィカト ニ長調BWV243。ソプラノに松井亜希、クリステン・ウィットマー、カウンターテナーにテリー・ウェイ、テノールに櫻田亮、バスに加耒徹。ジャン=フランソワ・マドゥフのナチュラル・トランペットが大活躍。
●「マリアの讃歌」というテーマのおかげか、全体に喜びと祝祭感にあふれる公演に。冒頭の気迫に満ちたブクステフーデから、おしまいの壮麗きわまりないマニフィカトに至るまで一本の大きなストーリーが感じられるプログラム。ソロの聴きどころも満載で、独唱はもちろんのこと、オーボエ・ダモーレ、ソロ・ヴァイオリン、トランペットなど華やか。BCJ定期では大なり小なりうっかり集会に紛れ込んでしまった異教徒の自分を意識せずにはいられないのだが、その点でバッハのマニフィカトはもっともオープンで、宗教を超えた普遍的で抽象化された喜びの感情を伝えてくれる音楽だと感じる。
●優人さんの指揮のもと、雅明氏がオルガンを弾いているという絵があまりに感動的。子が親の後を継いで音楽家になり、アンサンブルを率いる。これは決して容易ではないはず。父親としてこれほど深い喜びに浸れることがほかにあるだろうか。
June 3, 2019