●少し遡って、6月25日は東京オペラシティで「B→C バッハからコンテンポラリーへ/213 金子亜未(オーボエ)」。プログラムはバッハのオーボエ協奏曲ヘ長調BWV1053Rとソナタ ト短調BWV1030b、平川加恵「翔る ─ オーボエとピアノのための」(金子亜未委嘱作品、世界初演)、平尾貴四男のオーボエ・ソナタ、ドラティのドゥオ・コンチェルタンテ。つまり前半がバッハ、後半が20世紀から現代の音楽というプログラム。共演者も前半が桒形亜樹子のチェンバロ、後半が田島ゆみのピアノという、「一粒で二度おいしい」ぜいたく仕様。
●前後半ともに聴きごたえがあったが、より楽しめたのはバッハ。のびのびとして勢いがあって、心地よい。協奏曲はチェンバロ伴奏で。後半は委嘱新作がフランス近代オマージュのようなテイストだったことに加えて、ほかの2作も新しくはないので、あまりコンテンポラリーという感じがしない。アンコールはシューマンの民謡風の5つの小品より第2曲で、これが絶品。
●ドラティのドゥオ・コンチェルタンテは技巧性豊かな作品。オーボエの定番曲ということだが、作曲者のドラティとは、あの名指揮者アンタル・ドラティのこと。レコーディング活動が旺盛で、ハイドンの交響曲全集をはじめ、指揮者としての存在感は大きかった。が、あれだけ録音が多くても、死後、指揮者として話題になることはめっきり減り、一方で作曲家としてはこうして作品がしっかり生き残っているわけで、ドラティもまた「作曲もする名指揮者」から「生前は指揮者としても活躍した作曲家」への道を歩んでいる。
July 3, 2019