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July 18, 2019

映画「スパイダーマン:スパイダーバース」(ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン監督)

●もう映画館では二番館でしかやっていないと思うが、映画「スパイダーマン:スパイダーバース」(ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン監督)は衝撃的な作品だった。あまりの映像美に、見た後で軽く憂鬱になるほど。実写ではなく、CGアニメなんだけど、こういうのってなんていうのかな、3Dなんだけど、手書き風のタッチが加わっていて、ところどころ2Dでもあり、コミックの手法も生かされている。最初から最後まで、画面がとことんカッコいい。気が遠くなるほど手がかかっていて、クリエイター魂が爆発している。
●しかもストーリーまで革新的。自己言及的という意味でポストモダン時代のスパイダーマンになっている。なにしろ、いきなりスパイダーマンが敵に倒されて、いなくなっちゃう。この話は多元宇宙ものになっていて、別の宇宙からわれわれのニューヨークに何人ものスパイダーマンがやってくる。お腹が出ている人生にくたびれた中年のピーター・パーカーだったり、ピーター・パーカーのガール・フレンドのグウェンがスパイダー化しているスパイダーグウェンだったり、日本のアニメ風絵柄の女子高生がロボを操るペニー・パーカーだったり、フィルム・ノワールの世界から飛び出してきたスパイダーマン・ノワールだったり、カートゥーン風の絵柄の子豚型スパイダーマンだったり。彼らと、このニューヨークで二代目スパイダーマンになろうとする主人公マイルスが、キング・ピンらの悪役に挑む。おかしすぎる。
●こんなに革新的な映像表現を実現しながらも、骨格は男の子の成長の物語、家族愛の物語という、万人向けエンタテインメントの定型を保っているところもスゴい。そこがもどかしいところでもあるんだけど、興行としても成功させようという気概が伝わってきて、やっぱりスゴい。