●この時期にシーズンを振り返って視聴するベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホール。といっても、なかなかまとめては見られないのだが。
●5月、ヘルベルト・ブロムシュテットが登場。N響定期と同じくステンハンマルの交響曲第2番を披露。作品を広めようという使命感が伝わってくる。ベルリン・フィルだってこの曲を演奏する機会はめったになさそうなものだが、彼らはまるで何度も演奏したことのある「名曲」のように演奏する。艶消しの渋い色調で描かれた気品の漂うステンハンマル。ものすごい高級感。編成はそんなに大きくないけれど、「民謡テイストの入ったブルックナー」という印象は変わらず。最後の一音の後、聴衆が沈黙して、完全な静寂が訪れるあたり、聴く人もやはりブルックナー的ななにかを感じ取っているんじゃないだろうか。楽員の退出後も拍手が止まず、ブロムシュテットのソロ・カーテンコールに。
●6月、ベルリン・フィル・デビューを飾ったのは、1974年ギリシャ生まれの指揮者、コンスタンティノス・カリディス。モーツァルトの交響曲第34番と第38番「プラハ」の間に、ショスタコーヴィチ(バルシャイ編)の室内交響曲と、弦楽八重奏からの2つの小品(弦楽オーケストラ版)が入るというプログラム。モーツァルトとショスタコーヴィチの対照が際立つ。指揮棒は使わず。バルシャイ編の室内交響曲は驚異的な精緻さ、ニュアンスの豊かさ。少数精鋭のベルリン・フィル、恐るべし。モーツァルトの「プラハ」は、ところどころアーティキュレーションが独特で、新鮮というか違和感があるというか微妙なところ。第1楽章提示部をリピートしてくれるのは吉。第1楽章再現部で休符をうんと長めにとって「見得を切る」感じとか、おもしろい。第2楽章はテンポが速くて、ほとんど舞曲風。ベルリン・フィル・デビューで、しっかり自分を打ち出しているのは立派。
●コンサートマスターは樫本大進。フルートがデュフォー、オーボエがケリー。ベルリン・フィルの首席フルートと首席オーボエがだれかというのは、サッカーでいえば先発2トップの発表みたいな感じかもしれない(先発もなにも、途中交代はありえないのだが)。ビッグクラブのように、チャンピオンズリーグはパユとマイヤー、リーグ戦はデュフォーとケリーみたいなぜいたくローテーションのイメージで。
August 27, 2019