●ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールで、キリル・ペトレンコの首席指揮者就任演奏会を観る。ペトレンコ、ついに首席指揮者に就任。というか、決まってから就任するまでに何年かかったのか。新しい旅の始まりというよりは、スタートラインに立つまでの長い旅がようやく終わったという感慨すらある。プログラムはベルクの「ルル」組曲とベートーヴェンの「第九」。新旧ウィーンの音楽。歌手陣はマルリス・ペーターゼン(ソプラノ)、エリーザベト・クルマン(アルト)、ベンヤミン・ブルンス(テノール), ユン・クヮンチュル(バス)、ベルリン放送合唱団。コンサートマスターは樫本大進。木管楽器セクションの中央にはフルートのパユとオーボエのマイヤーの2枚看板。はっと気がつくと、パユとマイヤーもずいぶん髪に白いものが目立つようになっていて、2トップが熟している。クラリネットはオッテンザマー。
●「第九」は奇をてらわないけれども新鮮な演奏。第1楽章はやや速めのテンポで歯切れよく、弾むよう。第2楽章も弾力性があって、きびきびと進む。合唱は最初からスタンバイしていて、第3楽章の前に独唱者が入場(拍手は出ない)。第3楽章から第4楽章へはアタッカで。vor Gottのフェルマータで、目をむいて真っ赤な顔で音をひっぱるペトレンコ。すごい気迫。高解像度と熱量を両立させた立派な演奏。でも、少し気まじめすぎるかな。ペトレンコが目指しているのは、ひとつにはオートマティズムの排除なんだろうと思うんだけど、ディテールまで意匠を凝らしたとしても、どこまで細部に神は宿るんだろう。
September 5, 2019