September 13, 2019

ロイヤル・オペラのグノー「ファウスト」

●12日は、東京文化会館で英国ロイヤル・オペラ2019、グノーのオペラ「ファウスト」。指揮は音楽監督アントニオ・パッパーノ。デイヴィッド・マクヴィカー演出。歌手、オーケストラ、舞台装置、バレエ、いずれも高水準で大いに楽しんだ。ファウスト役のヴィットリオ・グリゴーロは輝かしく張りのある声で、奔放なキャラクターも加わってスターのオーラ全開。マルグリートのレイチェル・ウィリス=ソレンセン、メフィストフェレスのイルデブランド・ダルカンジェロも聴きごたえ十分。ロイヤル・オペラのオーケストラは明るく華やかな音色を持ち、弦楽セクションのしなやかなサウンドも吉。なにより効果的だったのはバレエ。ほとんどアスリート的なキレのある動き。第5幕「ワルプルギスの夜」のバレエがエグい。あの妊婦と来たら!
●グノーの「ファウスト」って、ファウストのマルグリートへの恋が成就する第2幕、第3幕あたりは話があまりおもしろいとは思えないんだけど、第4幕でファウストがマルグリートを捨てた後に話が飛ぶと、がぜんおもしろくなる。ファウストってあれだけ学問を究めた人物なのに、悪魔に魂を売ることと引き換えに手にする現世的欲望は意外とフツーだ。若返ってマルグリートと愛し合って、でも妊娠させて捨てる。マルグリートは罪を犯し、牢獄に入る。それを助けようとするファウスト。若さを手に入れて待っているのはそんな鬱展開。どうせなら、もっと爽やかな青春とか手に入れられなかったのか。キラッキラに輝く青年ファウスト、とか。そして、悪魔の話であるにもかかわらず、グノーの音楽はまったく悪魔的ではなく、美しく磨き上げられた宝石がどこまでも並んでいるような上品さがある。なので、バレエシーンであれくらい思い切りやってくれてちょうどいいのかも。
●悪魔に魂を売る話はしばしば目にするが、悪魔は買った魂をなにに使うのだろうか。

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