●さて、21日、前日のパーヴォ&N響のマーラー5番の強烈なインパクトが色褪せないまま、同じ曲をヴァイグレ&読響で聴くことに。会場は東京芸術劇場。入口前の池袋西口公園は絶賛工事中で、なにかができつつある。迂回路を通って入館しようすると、なんと、スタジアムで見慣れたあの光景が。そう、手荷物検査だ。ラグビーワールドカップ開催期間中であり、翌年の東京五輪への予行練習でもあるのだろう。一瞬、「あれ、カバンになにが入ってたっけ。カビの生えたパンとか入ってたらヤダな」とうろたえたのだが(ウソ)、カバッとカバンを開ける。とにかくカバッと開ければチラ見で終わるという経験則。ガバッ。
●前半はルドルフ・ブッフビンダーの独奏でベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。冒頭のピアノ・ソロから悠然としたテンポで始まる、20世紀ウィーンの伝統美の世界。ソリスト・アンコールにベートーヴェン「悲愴」第3楽章。後半のマーラーは一歩一歩着実に踏み進める質実剛健なスタイルで、前日に聴いたパーヴォ&N響とは同じ曲と思えないほど。2階席だったが、芸劇だとステージが近く感じられることもあってか、重量感があり、雄弁で巨大な音楽を聴いているという実感。管の聴きどころは豊富だが、緊密な弦楽器のアンサンブルが印象に残る。第4楽章はテンポが遅いのだが、ロマンに耽溺しないまっすぐな音楽。終楽章は堂々たるクライマックスを築いて、客席の反応も上々。ちなみに20日と21日と22日の同一プログラム3公演とも完売という盛況ぶり。
●連続して聴いたマーラーの5番、順序や日にちが違っていたら、またずいぶん違った感じになったかも。こんなに重い曲を二日続けて聴くのはどうかとも思ったが、結果的には充実の二日間。漠然とした実感だが、たまたまプログラムがかぶるとか、たまたまシリーズになっているとか、超高密度な首都圏のコンサート・スケジュールから自然発生的にできた「祭り」は、だいたい期待以上におもしろくなる。ような気がする。
September 25, 2019