●映画「蜜蜂と遠雷」(石川慶監督)を鑑賞。先日ようやく原作「蜜蜂と遠雷」(恩田陸著)を読んだところなんだけど、かなりのところ原作に充実な作りになっている。というか、原作を読まずに映画を見て、どれくらい話についてこれるものかと思ったほど。映画館は盛況のようでなにより。
●なんといってもすばらしいのはコンクールの本選の場面。ちゃんと原作通り、バルトークのピアノ協奏曲第3番やプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番が大々的にフィーチャーされているのがうれしい。実は原作とは栄伝亜夜役とマサル役で本選の曲が入れ替わっていて、本当だったらクライマックスで亜夜が弾くのはプロコフィエフの第2番だったが、第3番でも文句はない(この入れ替えは監督の発案らしい)。ショパンやラフマニノフに差し替えられなくて本当によかった。おかげで全国各地の映画館でみんながクライマックスでプロコフィエフに涙するという最強に麗しい光景が展開されることに。
●でもいちばん映画を通して目立っている曲は、コンクール用の新作(という設定で、実際に新曲が書かれた)藤倉大の「春と修羅」かも。陰の主役はこの曲。
●主役4人のピアニストについて、実際に演奏を担当しているのは栄伝亜夜役が河村尚子、マサル役が金子三勇士、風間塵役が藤田真央、高島明石役が福間洸太朗(それぞれの役について映画にインスパイアされたCDがリリースされている)。風間塵役に藤田真央というのは現実に考えられ得る最高のキャスティングでは。役者の人もそれらしい雰囲気で、実際にはまったくピアノ経験はないそうだが演奏の演技はかなり健闘していた。亜夜役に河村尚子はいいとして、役者さんは小説で受けた印象とかなり違う。福間洸太朗は高島明石役というよりは、断然マサル役って気がする。などと、あれこれ勝手なことを言えるのが、原作を読んだ後の映画の楽しみ。
October 18, 2019