●17日は東京芸術劇場でピエール・ダミアーノ・ペレッティによるナイトタイム・パイプオルガンコンサート。19時30分開演で休憩なしの短めプログラム。仕事帰りに格安のお値段(なんと千円)で東京芸術劇場のオルガンを聴けるのがこのシリーズの魅力。最近、オーケストラ公演では反響板を下してオルガンが見えなくなっていることが多いと思うんだけど、ここのオルガンは伝統的なデザインのバロック面とシルバーのモダン面と2種類の顔があるのが特徴。これ、表と裏になっていて、回転して切り替わるんすよね。まるで巨大ロボの合体シーンのごとく、公演中にンゴゴゴと回転して面が変わるのが見どころのひとつ。バロック面からモダン面へと裏返るのに要する時間は約3分(その間、座席でじっと待つ)。こういう機械萌え要素にぐっと来る人なら、公演を3割増しで楽しめるはず。
●で、今回のプログラムはジョヴァンニ・デ・マック「レ・ファ・ミ・ソによるカプリッチョ」、ストラヴィンスキー「5本の指で」より5曲、ブルーンスのコラール「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」、バッハの前奏曲とフーガ ハ長調BWV547、ヴォルフラム・ヴァーグナー(1962~ )「ヒムノス」、フランクのオルガンのための6つの小品より「終曲」。ストラヴィンスキーの「5本の指で」は本来はピアノ曲で、全音ピアノピースで発売されているような初級者向け楽曲。なんだけど、曲想は「ペトルーシュカ」の超簡略化バージョンみたいなところがあって楽しい。ヴォルフラム・ヴァーグナーの「ヒムノス」は2016年の作。作曲者の名前だけ見るとワーグナー家の一族と思ってしまうが、たぶん関係ない(違ってたらゴメン)。作風は明快、オルガンをパワフルに鳴らす壮大な作品。たとえるならドラクエでのラスボスとの戦闘シーン風で始まって、最後は荘厳な賛歌で終わる。序盤、オルガンの不調により演奏が中断して、調整後にやり直すという珍しいアクシデントも。フランクの「終曲」は猛烈にカッコいい。鬱屈したロマンと執拗さがたまらない。曲名が「6つの小品」となっているけど、この「終曲」にはまったく小品感がなく、むしろ大交響曲のフィナーレ楽章のよう。
●休憩がないので、短い時間でたくさん聴けて、すごいお得感。
October 21, 2019