●7日はサントリーホールでヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団。プログラムがおもしろくて、前半にベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」、後半にリヒャルト・シュトラウスの交響詩「死と変容」、ワーグナーの「タンホイザー」序曲。普通とは逆のような曲順になっている。先達アルトゥール・ニキシュが組んだプログラムの再現ということなのだが、ニキシュの狙いはどこにあったのか。ひとつには、これが「死と再生(救済)」のプログラムだからなのだろう。英雄の葬送があり、魂が浄化され、最後は救済に至る。「タンホイザー」の結末で起きるのは、教皇の杖に緑が芽吹くという奇跡だった。もうひとつはベートーヴェン自身が「英雄」に対して書き残した、「この交響曲は通常よりも長大であるため、コンサートの終わりよりも始まってすぐに演奏されるべきである。というのも、序曲やアリア、協奏曲の後で演奏されると、作品が聴衆に与える独自の効果が失われてしまうからである」という言葉も意識されているに違いない。全体として、ひとつの長篇小説を堪能したような気分。
●前半はもうひとつのりきれなかったのだが、後半のシュトラウスは白眉。「死と変容」、カッコよすぎる。洗練された芸術へと昇華された中二病というか。20代半ばの若者による傑作。というか、ほかの2曲も30代前半までに書かれているわけで、それぞれに若さとヒロイズムへの熱狂がつながっている感。
November 8, 2019