●15日はサントリーホールでクリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン・フィル。こういった来日公演では珍しくプログラムがおもしろくて、3人のシュトラウスが並ぶ。前半にリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」と「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、後半にヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ「ジプシー男爵」序曲、ヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「神秘な魅力」(秘めたる引力、ディナミーデン)、リヒャルト・シュトラウスのオペラ「ばらの騎士」組曲。血縁関係のないシュトラウスがワルツでつながっているのもおもしろい。
●で、演奏は久々にウィーン・フィルが伝家の宝刀を抜いたのを聴けた!といった感。もちろん、ウィーン・フィルはいつだってウィーン・フィルではあるんだけど、これだけ引き締まって、よく鳴り、華やかなサウンドを聴ける機会はめったにない。この状態のウィーン・フィルを聴けるのは至福の体験。「ばらの騎士」のいきなり頂点に向かって全力疾走するみたいな冒頭部分も壮麗きわまりなし。「本物」の「ばらの騎士」を聴いた感が半端ない。ティーレマンのあくの強い造型はともあれ、この響きの質感と来たら。これが毎回聴けたらなあ……と思わんでもない。
●ヨーゼフ・シュトラウスの「神秘な魅力」に、「ばらの騎士」によく似たワルツが登場して、あたかも元ネタ感(本当はどうなの?)があったのが楽しい。「天体の音楽」にも感じるけど、ヨーゼフの音楽にはヨハンとは違った趣味のよさ、洗練を感じる。ヨハンはもちろん、リヒャルトのほうにもない含羞があるというか。あと、この曲も「天体の音楽」同様、目に見えない引力という物理現象をワルツを踊るカップルに見立てる自然科学ネタなのか。
●アンコールにエドゥアルト・シュトラウスのポルカ・シュネル「速達郵便で」。さらにもうひとりシュトラウスが登場することに。盛大な拍手喝采に続いて、ティーレマンのソロ・カーテンコールが2度もあった。
November 18, 2019