●元旦のウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサートは、お正月モードでテレビをつけっぱなしにしてチラチラと見た。指揮はアンドリス・ネルソンス。ゲヴァントハウス管弦楽団と来日したときにも書いたけど、すっかり恰幅がよくなって視覚的にも巨匠然としている。たまに腕の動きにカルロス・クライバーを連想するが、聴いた感じはメリハリが効いていて、むしろマゼールを思い出す。ロンビの「郵便馬車のギャロップ」では昔取った杵柄でトランペットを披露。
●今回はなにかと話題が多かった。ベートーヴェン・イヤーということで「12のコントルダンス」抜粋がバレエ付きで。それとヨーゼフ・シュトラウスの曲がずいぶん多いなあと思ったら、没後150年だった。150は中途半端な気もするのだが、ウィーン・フィルが記念の年だというのなら文句は言えない。ワルツ「ディナミーデン」は昨秋ティーレマン指揮ウィーン・フィルが「ばらの騎士」組曲と並べて演奏していたように、オックス男爵のワルツの元ネタ(らしい)。この曲は「ばらの騎士」との関連を抜きにしても秀作。「ディナミーデン」というのは造語らしいので日本語に訳出されないのはしょうがないんだろうけど、副題が「秘めたる引力」で分子や原子が引き合う力を指しているんだとか。分子運動をワルツに見立てるという意味では、同じヨーゼフの代表作「天体の音楽」で星々の運行をワルツに見立てたのと似た発想。元エンジニアらしいアイディアというべきか。ヨーゼフはワルツ史上もっともミクロな視点によるワルツともっともマクロな視点によるワルツを書いたことになるんじゃないだろうか。
●最後の「ラデツキー行進曲」は「非ナチ化」のために楽譜を一新するというニュースがあったが、ぱっと見ではいつもの恒例「ラデツキー行進曲」の光景。むしろあの手拍子をどうにかしようという指揮者はいないのか。
●来年はムーティが指揮するそう。2018年に続いてまたも。
January 6, 2020