●今頃お正月の話題が続くのもなんだが、今年の天皇杯決勝は元旦の新国立競技場が舞台だった。当初のザハ・ハディド案が破棄され、あれやこれやの紆余曲折があって、もはや「サッカー場」としての存在感が意識からすっかり抜け落ちていた新国立競技場だが、はっと気がついたら競技場は完成していて、こけら落としが天皇杯決勝だったんである。チケットは完売。録画をゆるく眺める。
●対戦カードはヴィッセル神戸vs鹿島アントラーズ。常勝軍団の鹿島だが今季はいまだ無冠。といっても、あれだけ主力選手が欧州に移籍しても、リーグ戦は3位だし天皇杯でも決勝まで来ているのが恐るべきところ。試合は18分に神戸がラッキーなオウンゴールで先制(藤本憲明のゴールかオウンゴールかよくわからなかった)、さらに38分にまたしてもラッキーな藤本憲明のゴールで追加点。全般に拮抗した戦いに思えたが、結果は2対0で神戸が完勝。クラブ初のタイトルを獲得した。新しい国立競技場の門出で悲願の初タイトルを手にしたのだから、神戸のファンにとってはたまらない元日決戦だっただろう。
●神戸が楽天化して以来、イニエスタの年俸に3年間で約100億円みたいな、Jリーグの従来の常識では考えられない巨額の予算がつぎこまれるようになったものの、これまで結果が付いてこなかった。ひとりふたりのスーパースターが来ても勝てないのがサッカー。でも気がつくとじわじわとディフェンスの強化も進んでいて、3バックの一角にはフェルマーレンがいるし、酒井高徳の加入も相当に効いている。イニエスタやポドルスキやビジャがいなくても、この調子で堅実に強化していけば安定した強豪チームになりそうなもの。それにしても藤本憲明はJFLからJ3、J2、J1と上がってきて、最後はイニエスタといっしょにプレーしてゴールを決めてタイトルを獲得しているわけで、サッカーマンガを地で行く展開。
●マリノス・ファンとしては、シーズン途中で移籍した飯倉大樹が神戸でタイトルを手にしたことがうれしい。出て行った者も、残った者も、最後は笑ってシーズンを終えられた。
●新国立競技場の歴史に残る最初のゴールがオウンゴールだったことに、サッカーの神様のイジワルさを感じずにはいられない。
January 7, 2020