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January 14, 2020

ミーツ・ベートーヴェン シリーズ vol.1 仲道郁代

池袋西口公園
●10日は東京芸術劇場へ。年末年始は演奏会から遠ざかっていたので久々の公演。芸劇前の広場にグローバルリングができていて、なんだかキラキラしていて、池袋っぽくない。
●この日はベートーヴェン生誕250年企画「ミーツ・ベートーヴェン シリーズ vol.1 仲道郁代」。ベートーヴェンのピアノ・ソナタを2種類のフォルテピアノとモダンピアノで弾くという趣向。全体は3部構成になっていて、第1部は演奏前に20分強のトークが置かれ(急遽入ることになったそう)、平野昭、太田垣至、仲道郁代各氏が登壇。ベートーヴェンの創作期間が楽器の発展と重なっており、曲によって使用音域が違っている等のレクチャー。その後、J.A.シュタイン(1790年モデル/61鍵/米ツッカーマン製)でピアノ・ソナタ第8番「悲愴」とピアノ・ソナタ第14番「月光」第1楽章のみ。10分の短い休憩をはさんで第2部はブロードウッド(1816年モデル/73鍵/ジョン・ブロードウッド&サンズ製)でピアノ・ソナタ第30番。さらに15分の休憩をはさんで第3部はヤマハCFXでピアノ・ソナタ第14番「月光」とピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」。ピアノという楽器のダイナミックな変遷をたどる盛りだくさんの構成。フォルテピアノはいずれも奏者所有。
●はたして東京芸術劇場の大ホールで、フォルテピアノが聞こえるものか。いちばん気になったのはその点なのだが、思ったよりも音はちゃんと届く。2階席だったのでステージからの距離はけっこうあったのだが、音量的な不満はあまり感じない。楽器の後方に透明な反響板あり。ただ、広大な空間と残響のなかに埋もれてしまった要素も少なからずあったんじゃないかなとは思う。ニュアンスというか、身振りというか。
●最大の驚きは、モダンピアノが鳴り響いた瞬間。それまでフォルテピアノの音に順応していたから、「月光」の冒頭が巨大音響の塊として鳴り響く! なんという太い、金属的な轟音なのか。強烈な違和感。ところが、聴いているうちにだんだん慣れてきて、「ワルトシュタイン」が始まる頃にはもうなんの違和感も感じないし、音の強靭さに圧倒されることもなくなる。いつものピアノだ。「月光」冒頭が巨大音響だったのに、「ワルトシュタイン」はごく普通の音に聞こえる。人間の慣れって怖い!
●アンコールがおもしろい。「エリーゼのために」をまずはヤマハで弾き始め、途中でシュタインへ移動、さらにブロードウッドへと楽器を替えながら演奏する。いったん演奏を止めて、しずしずと別の楽器へ歩いてから、また続きを弾き始めるという優雅な聴き比べ。客席の反応は上々。