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January 21, 2020

十二月の十日(ジョージ・ソーンダーズ著/岸本佐知子訳/河出書房新社)

●ジョージ・ソーンダーズの新刊「十二月の十日」(岸本佐知子訳/河出書房新社)を読む。多様な奇想で彩られた短篇集なのだが、おおむね共通するのはダメ男たちのストーリーであること。貧乏だったり、賢さが足りなかったりする男たちが、ピンチに直面して悪戦苦闘する。印象的だったのは「センプリカ・ガール日記」。娘が誕生パーティで惨めな思いをしないように、経済的な苦境にある父親が駆けずり回って、一発逆転の華やかなパーティを開く。ところが……。一見普通の現代アメリカの光景のように思えて、読み進める内に庭に設置する「SG飾り」なるものの正体がわかって慄く。笑ったのは「スパイダーヘッドからの脱出」。人間モルモットになって感覚を増幅する薬を投与された若者たちを描く。
●全体に「トホホ」では済まされない、身につまされる話が多い。苦くて、切ない。同時に、多くは救いのある話でもある。孤独ないじめられっ子の少年と自ら命を絶とうとする男の奇妙な出会いを描いた表題作もそうだし、巻頭のモテない少年の「ビクトリー・ラン」や、暴力的衝動に突き動かされる孤独な帰還兵の「ホーム」もそう。ダメ男たちに訪れるささやかな栄光の瞬間、と言えるのか。