February 14, 2020

山田和樹指揮読響&ポゴレッリチのシューマン他

●13日はサントリーホールで山田和樹指揮読響。イーヴォ・ポゴレリッチ(ポゴレリチ)がシューマンを弾くということで事件の予感。プログラムは前半にグリーグの「ふたつの悲しき旋律」、シューマンのピアノ協奏曲(ポゴレリッチ)、後半にドヴォルザークの交響曲第7番。開演前、ステージの片隅に置かれたピアノでニット帽と普段着のポゴレリッチがピアノを静かに鳴らしているのはいつもの光景。しかし瞑想的な即興に留まらず、ところどころさらっていた感も。
●本編は期待通りの怪演。強弱の表現が両極端に触れがちで、テンポ設定も変幻自在。打鍵は相変わらず強靭で、軽くアクセルに触れただけで爆発的に加速するスポーツカーのよう。表現のベースが強打なので、曲のイメージはがらりと変わる。流麗さや弾力性はかすんで、剛性の高い巨大建造物のようなシューマンに。自在のソロに対して、山田和樹指揮読響は献身的。例によって譜面と譜めくりあり。なのだが、めくったページがふわりと戻されがちで、無言の格闘がくりひろげられてハラハラする。楽章間にギュッと楽譜をつかんで開きぐせを付けるポゴレリッチ。極度にテンポが遅いということはなく(第2楽章などは速め)、しかし入念さ執拗さは期待通り。客席は大喝采。ソリスト・アンコールはなし。
●後半のドヴォルザークは一転して自然な音楽の流れから生まれる白熱したドラマ。ドヴォルザークの交響曲は8番と9番は完璧な名曲だけど、7番や6番が持つみずみずしさは貴重。ひなびたブラームス感というか。楽しい。よく鳴るけど、彩度は控えめ。普通ならこれでおしまいだが、予想外のアンコールがあって、アザラシヴィリの無言歌。冒頭、弦楽四重奏ではじまって、続いて弦楽合奏でノスタルジーを喚起する抒情的な楽想がくりひろげられる。これは絶品。一曲目の弦楽合奏によるグリーグとシンメトリーをなす。

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