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February 17, 2020

イーヴォ・ポゴレリッチ ピアノ・リサイタル

●16日はサントリーホールでイーヴォ・ポゴレリッチ(ポゴレリチ)のリサイタル。プログラムはバッハのイギリス組曲第3番ト短調、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第11番変ロ長調、ショパンの舟歌と前奏曲嬰ハ短調、ラヴェルの「夜のガスパール」。開演前から普段着でピアノに向かうウォーミングアップ(?)はいつものことだが、今回は「影アナ」として諸注意アナウンスの英語版をなぜかポゴレリッチ本人が読んでいた。場内どよめきと笑い。
●演奏はポゴレリッチ様式とでも言うほかない、強靭な打鍵をベースとしたもの。強弱が両極に寄りがちで、基本テンポ設定はおおむね遅い。低音の強打は破壊的。一時の作品が崩壊するほどの遅さではないにしても、イギリス組曲第3番のサラバンドや、ショパンの前奏曲、「夜のガスパール」の「絞首台」などはかなり遅くて、入念。しばしば音楽が推進力を欠いて停滞してしまうのだが、そこに漂泊の美みたいなものがあって、強烈な中毒性を伴う。白眉は「舟歌」かな。崇高な高揚感があって、ただの舟歌では済まない荘厳で巨大な音楽。
●いつものように譜めくりあり、使わない楽譜はバサッと床に置く。前半、なぜかバッハの後で拍手が控えられ儀式的なムードになるかと思いきや、後半のショパンでは逐次拍手あり。ラヴェルの後は、すぐに脚でピアノの椅子と譜めくりの椅子を片付けて、アンコールなし。カーテンコールでスタンディングオベーション多数。客席の年齢層は幅広く、若い人もけっこう多いなと感じる。