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March 23, 2020

「1%の成功をつかむ、99%の準備力」(霜田正浩著/朝日新聞出版)

●こんな本が出ていることに気づかずに、やっと読んだ、「1%の成功をつかむ、99%の準備力」(霜田正浩著/朝日新聞出版)。書名が完全にビジネス書のノリだし、著者名が目立たなくて、代わりに帯のカズばかりが目に入るという今どきの作りなのだが、著者はレノファ山口の霜田正浩監督。というか、日本代表のサッカー協会技術委員長としてザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチという3人の監督を招聘した人といったほうが通りがいいかもしれない。FC東京やJEF市原・千葉のコーチを務めた後、日本サッカー協会入りし、その後、ベルギーのシント=トロイデンVVのコーチを経て、2018年にレノファ山口の監督に就任した。
●中身もビジネスパーソン向けになっていて、一言でいえば「何事も準備が大事」という話をくりかえしている。サッカー・ファンとしてはせっかくこれだけ稀有な体験を重ねてきた人なんだから、もっとサッカーの話に特化してくれよと思わなくもないのだが、それでも貴重な話がいくつもある。やはりおもしろいのは代表監督との交渉の大変さ。ファンが想像するよりもずっと多くの候補者と会っているし、交渉の難しさやプレッシャーの厳しさも伝わってくる。ザッケローニのとき、なかなか監督が決まらなかったが、焦りもあってもっと簡単に契約できる人で妥協したくなったのをぐっとこらえたという話が出てくる。だれのことなんだろう。あと、今だから言える話として、ザッケローニの前にペジェグリーニと交渉していたが、年俸の要求が高すぎて交渉が決裂したという生々しい話も。
●「サッカー監督という職業は、一度監督を引き受けたら、最後はほとんどの人が敗者としてクラブ去っていきます。そういう仕事です」という一文も味わい深い。よく言われるように、サッカーという競技そのものが「ミスのスポーツ」。ボール保持者のほとんどのプレイはミスからボールを奪われて終わる。ゴールの多くはミスから生まれる。どんな一流選手でもミスから逃れられない。そして、監督はいつも敗者としてチームを去る。サッカーには常に勝つ人、常に正しい人の居場所がない。
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●ついに首相からオリンピックの延期容認論が出た。巷間言われるように2年後になるのだろうか。
プラシド・ドミンゴも新型コロナウイルスに感染と発表。体調は良好だという。