●人生相談って、どんな人なら書けるのかな……と思うと、数々の修羅場をくぐり抜けてきた人で、聡明で、他者への共感能力がある人ってことになるだろうか。自分が通ってきた道について有益なことを語るのは容易でも、まったく自分の人生で視野に入っていない悩みにきちんと答えることは難しい。「鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい世間を楽に生きる処方箋」(鴻上尚史著/朝日新聞出版)みたいな本は貴重で、それぞれの回答に切れ味がある。
●「自分が他人に不寛容すぎてどうにしかしたい」といった悩みに対する回答が印象に残っている。ネット時代になって、みんな「自分がどう見られているか」「どれくらい評価されているか」を気にせざるを得ないようになった、でも世の中にはすごい人たちがいっぱいいる。自分が得意なことでも、もっと得意な人が簡単に見つかる。それが耐えがたいから「私は本当はこんなレベルじゃない」って思うようになる、って言うんすよ。以下引用。
映画を得意気に評論しても、音楽を通ぶって語っても、文学にウンチクを傾けても、上には上がいて、潰されます。
でも、唯一、潰されない言葉があります。
それは「正義の言葉」です。
正義を語っている限り、突っ込まれる可能性はないのです。否定されるかもしれないと 怯える必要はないのす。
「ツイッターで未成年の飲酒を見つけた」「道路いっぱいに広がっている自転車がじゃま」「信号無視してる奴がいる」(中略)
だから、「自分はこんなもんじゃない」と思い、けれど、何かを言って否定されたくない人は、「正義の言葉」を意識的にも無意識的にも語るのです。
●ニュースを眺めていたら「自粛警察」っていう破壊力のある言葉を見つけて、この本を思い出した。