●木村元著「音楽が本になるとき 聴くこと・読むこと・語らうこと」(木立の文庫)を読む。著者の木村元さんは音楽書の出版社アルテスパブリッシングの創業者のひとり。アルテスパブリッシングを立ち上げる前は音楽之友社で書籍編集を担当しており、長年にわたって良質な音楽書を世に出してきた。つまり、編集者が自ら書いた本がこちら。音楽と本のことについて語るならこの著者をおいてほかにいない。もとになっているのはアルテスパブリッシングのメールマガジンで連載されたエッセイ。大上段に構えたところはなく、すいすいと読めるのだが、根幹となっているテーマは音楽のあり方そのものについてであって、深いところに切り込んでくる。友人に宛てた私信のような、率直でゆるやかな音楽論。
●特に後半がおもしろい。「音楽との『出会い』はどこからやってくるのか」の章では、今やYouTubeが音楽を聴くためのツールになっており、CDを聴く人でさえSNS上でシェアするのはYouTubeのリンクだと指摘する。「SNSのタイムラインにおいては、音楽は画像として登場する」という一文に目からウロコ。
May 28, 2020