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2020年6月アーカイブ

June 30, 2020

6月が終わる

●信じがたい話かもしれないが、今日で一年の半分が終わる。ウィルス禍と自粛要請で、もがきながら嵐が過ぎ去るのを待っていたら、何か月も経っていたみたいな前半戦だった。
●本日をもって新潟のFMラジオ局、FM PORTは閉局。同日、名古屋のRadio NEOも閉局するということで、民放FM局が一度に2局減ることに。FM PORTでは10年間続いた拙ナビによる番組「クラシックホワイエ」が6月27日に最終回を迎えた。ひたすら楽しい仕事だったので感謝しかない。終盤は在宅でリモート収録が続いていたが、最後の最後はいつも通り赤坂見附のスタジオで収録することができた。
睡眠時間の調査によれば、20代女性の平均睡眠時間は7時間49分。毎日8時間近く寝るのが普通。20代男性は7時間36分。少ないのは50代男性で6時間31分しか寝ていない。若い女性に比べてオッサンは毎日1時間20分ほど、長く起きている。その1時間20分でなにをしているのだという謎。

June 29, 2020

Jリーグ再開! まずはJ2とJ3を無観客で


●週末、ついにJリーグが再開した。まずはJ2とJ3が先に再開(J3はこれが開幕)、次週にはJ1も再開する。まずは無観客試合だが、7月10日から観客を入れる方針がすでに発表されているので、気分的には無観客の寂しさよりも再開の喜びのほうがずっと大きい。不思議なもので、ブンデスリーガやプレミアリーグの無観客試合は練習試合にしか見えないのに、Jリーグだとほとんどそんな気持ちがわかず、中継からまぎれもない本物のパッションが伝わってくる。単に自国のリーグだからなのか、すぐに観客も戻ってくるとわかっているからなのか、閑古鳥が鳴く試合にワタシが慣れすぎているからなのか、理由はよくわからない。ちなみにDAZNのハイライトを見たところ、試合によって音声を加工していないところと、なんらかのバーチャル歓声を入れているところがあって、対応はまちまち。
●ちなみにJ3の福島vs八戸では「リモート応援システム」が導入されていたので、ワタシも参戦してみた。画面を見ながら「拍手」「歓声」「激励」といったボタンをクリックすると、なんだか本当に中継から「いいぞー」とか「行けー」みたいな声が自然な音量で聞こえてくる。えっ、これって現地でも流れてるの? でも試合と中継の時差があると思うけど、どうなってるんでしょ。ビデオゲーム感が半端ないが、楽しかった。
●上の動画は、もっとも熱い試合展開になった四国ダービー、J2の愛媛vs徳島。これはハイライトで見てもスゴい試合。今節は移動距離を最小にするため、近隣チーム同士の対戦が組まれている。感染症対策ゆえのマッチメイクだが、必然的にダービーマッチだらけになっており、そのあたりも「練習試合」感の払拭に貢献していたのかも。今のJリーグは運営が頼もしいなといろんな機会に感じる。
●なお、今シーズンは全カテゴリーで降格はないが昇格はあるという変則仕様。来シーズン、その分、降格チームを増やして帳尻を合わせるということらしい。また、短期間にハイペースで試合をこなすため、選手交代は5人までに増えている。ただし交代の回数は3回までなので、どこかで二枚替え、三枚替えをしないと5人の交代枠を活用できない。これはなかなか使い方が難しいかも。現実的には選手のターンオーバーが必須だろう。数多くの選手が起用される分、若手にはチャンスか。

June 26, 2020

ジョナサン・ノットのリモートワーク

●ジョナサン・ノットの指揮が予定されていた東京交響楽団の7月28日・東京オペラシティシリーズと7月25日定期演奏会だが、かつてない形で公演が開かれることになった。ノットは来日中止。しかし、映像で出演するという。ま、まさかリモートでオーケストラを指揮するのか!?と一瞬期待するが、音声と映像の時差の問題もあってライブ映像による指揮はさすがにできないそう。ノットの映像は事前に収録されたものを使い、リハーサルで「弓使いや演奏上の注意を細かく書かれた楽譜やメモ、あるいはノット氏が過去に演奏した音源などを事前に吟味」する。リハーサルの状況はすべてノットがチェックしたうえでオーケストラにフィードバックするのだとか。ということは、これは指揮なのか、指揮ではないのか。すでに数多くの共演を重ねてきたコンビだけに、リハーサルで十分にコミュニケーションが取れるのなら、ノットの音楽を作れるのかもしれない。(たぶん)かつてないリモートワーク・コンダクターの誕生だ。
●で、プログラムは変更される。7月18日・東京オペラシティシリーズは、ブリテンのフランク・ブリッジの主題による変奏曲 (指揮なし)とドヴォルザークの交響曲第8番。7月25日定期演奏会は14時と19時の一日2公演で、ストラヴィンスキーのハ調の交響曲(指揮なし)とベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。客席は左右一席ずつ空けた座席配置。
●また、7月23日のフェスタサマーミューザKAWASAKIの東京交響楽団オープニングコンサートでも、同様にジョナサン・ノットがベートーヴェンの「英雄」のみで映像出演する。映像出演というものが実際にどんな形になるのか、イメージがわかないのだが、型破りな挑戦が成功を収めてくれることを願う。

June 25, 2020

映画「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」(テリー・ギリアム監督)


●都内でも上映館が少なくあっという間に終わってしまった映画「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」(テリー・ギリアム監督)だが、やっとAmazonのprime videoで見ることができた。原題は「ドン・キホーテを殺した男」(本来この題で呼ばれるべき作品)。テリー・ギリアムは長年にわたりドン・キホーテの映画化を試みてきたものの、そのたびに数々の災難が降りかかり、企画は暗礁に乗り上げていた。一度はジョニー・デップ主演で撮影開始にまでたどり着くも、悪天候や役者の体調不良、保険を巡る経済的問題などで途中で制作中止に追い込まれてしまう。その様子はドキュメンタリー映画「ロスト・イン・ラマンチャ」に描かれており、これ自体、テリー・ギリアムの生々しい苦悩を描いた作品として一見の価値がある。で、月日は流れ、テリー・ギリアム(1940年生まれ)もすっかり老いてしまった……と思っていたら、なんと、今年、ついに映画「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」として公開されたんである。主演はアダム・ドライバー。そう、「スター・ウォーズ」悪夢の最新シリーズでカイロ・レン役を務め、先日のジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画「デッド・ドント・ダイ」にも出ていた彼だ! もしこれで「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」が駄作だったら、ワタシはアダム・ドライバーの駄作三連発を見ることになってしまう。だが、もちろん、そうはならない。これはまぎれもなく傑作だ。あの「未来世紀ブラジル」の、そして「モンティ・パイソン」のテリー・ギリアムにふさわしい名作が誕生した。
●で、これはもう徹頭徹尾テリー・ギリアム的な映画で、思い切っていってしまえば「未来世紀ブラジル」と同じことを言っている。夢と現実、正気と狂気、聖女と娼婦といった二項対立に加えて、「過去との対峙」というテーマが加わっているのが印象的。ちなみに「未来世紀ブラジル」で主人公の役人を演じていたジョナサン・プライスが、この映画では老いたドン・キホーテとして帰還している。アップデイトされた「未来世紀ブラジル」、年輪を重ねた「未来世紀ブラジル」といってもいいかもしれない。ワタシは最後の場面に声を上げて笑ったし、ウルッと来た。

June 24, 2020

ディズニーランド再開、アジア・オセアニア問題、COCOAリリース

東京ディズニーランドが7月1日から再開されるそう。ついにというべきか、やっとというべきか。混雑を避けるために一定程度入場者数を制限するというのだが、ディズニーランドといえば混雑と行列のシンボルのような場所。いったいどんな雰囲気になるんだろう。ディズニープリンセスたちはマスクを着用して登場するのだろうか。
●さて、今回のウィルス禍で、欧米とアジア・オセアニアでは極端に被害が違うという話を何度かここで書いてきた。6月23日時点での各国100万人あたりの累計死者数を見ておくと、ベルギー837名、イギリス628名、イタリア573名、スウェーデン507名、フランス454名、アメリカ364名、ドイツ106名、日本7.6名、韓国5.5名、ニュージーランド4.6名、シンガポール4.4名、オーストラリア4.0名(参照元はourworldindata.org)。おおむね欧米とアジア・オセアニアでは死者数が2桁違う。アジアだけが少ないのなら人種や生活習慣が原因かもしれないけど、オセアニアも少ない。どうしてこうなるのか不思議に思っていたのだが、その件について神戸大学の岩田健太郎氏が「なぜ、国ごとに差が出たのか。そして第二波がどうなるか」で見解を書いている。結論部分の一言を抜き書きしてしまうと「気づくタイミングの違い」なのだが、この長文は最初から最後までとてもためになる内容だと感じた。
●厚労省の新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) がリリースされた。これはGoogleとAppleが共同開発したAPIに基づくもので、GPSによる位置情報を使わず、Bluetoothを用いて「15分以上かつ1m以内の距離を維持したとき」のみ記録される(ITmedia該当記事参照)。多くの人がインストールしないと意味をなさないアプリだが、将来的にはAndroid・iOSともにOS自体にこの機能を搭載する方向で検討中だとか。ひとまずインストールしてみた。現状、街中で感染者と接触する確率はものすごく低いと思うが、第2波が来たときに意味を持つかもしれない。

June 23, 2020

@調布国際音楽祭


●リアルタイムでは見れなかったのだが、アーカイブをいくつか見て感嘆したのが「@調布国際音楽祭」。毎年、調布の街を舞台に開催されている「調布国際音楽祭」、今年はウィルス禍を受けてオンライン版の「@調布国際音楽祭」として開催されている。エグゼクティブ・プロデューサーは鈴木優人さん。最終日に開催されたのは、鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパンによるベートーヴェンの「第九」弟4楽章。なんと、総勢100名によるリモート演奏なのだ。各地から自宅で演奏する「第九」。そんなことができるんだという驚愕。全員イヤホンやヘッドフォンを装着しているので、クリック音(?)かなにかを聴いて同期させているのだと思うが、これで自然な音楽の流れを実現できているのがすごい。なにより「同期させただけの音楽」ではなく、ちゃんと人格を持った音楽というか、BCJのパーソナリティが反映されたベートーヴェンになっているのが画期的。ピッコロ奏者の方のお宅で、幼い女の子が音楽に合わせて踊っているのが尊すぎて泣ける。
●ほかには福川伸陽さんのオンラインホルン・リサイタルもアイディア満載ですばらしかった。ホルンの演奏そのものが見事なのはもちろんのこと、30分のビデオ配信のなかにホルンの魅力を伝えるためのいろんな工夫が詰まっている。楽器の発展についてのレクチャーもおもしろい。
●「@調布国際音楽祭」からは、単なる舞台の代替物ではなく、オンラインだからできるお祭りをやろうとする感じが伝わってくる。「@」(あっと)の一文字に意味がある。公演のアーカイブは一部を除いて6月30日まで公開されるそう。

June 22, 2020

無観客試合とホームチームの優位

 その2
●週末のプレミアリーグやスペインリーグの試合をDAZNでハイライト観戦したところ、試合によっては観客の歓声が聞こえてくる。もちろん、どの試合も無観客(なかには300人ほどの客を入れた試合もあったみたい)。どうやらゲームで用いられる疑似歓声を利用しているようなのだが、同じプレミアリーグでも、試合によって歓声が入っていたり入ってなかったりする。試合展開に応じて盛り上がるなど、それなりによくできているのだが、歓声があればあったで奇妙で落ち着かないし、なければないで練習試合感が出てくるしで、どちらがいいともいいがたい。
●で、いま気になるのは「ホームチームの優位」は無観客でもあるのかどうか、ということ。統計上、サッカーでは明白にホームチームの優位があるのだが、その主な原因は (1)観客にあるのか、(2)ピッチ・コンディションへの適応や移動と宿泊に伴う負担にあるのか、なにがどれほど効いているのかはっきりとしなかった。だが、今なら(1)と(2)を切り分けて考えることができる。すでにブンデスリーガではホームチームの勝率の低さが話題になっている。現状では再開後の試合数が少ないので偶然かもしれないが、これからプレミアリーグだけでも約100試合が行われるわけで、各国トータルすれば十分な数の試合数になるはず。ホームチームの優位性の内、観客要因は何パーセントを占めるのか。これはトトカルチョに対する影響も甚大。ウィルス禍がなければ決して確かめることができなかった壮大な実験が進行している。

June 19, 2020

ExcelBを讃えて


●まったく週末にふさわしい話題ではないのだが、最近、あまりに感動したのでぜひ紹介したいツールがある。それはっ、ドドーーン! 「エクセル簿記/ExcelB」という会計用ソフトなのだ! これがあれば青色申告のための帳簿付けのストレスが80%減る(当社比)というすぐれモノ。えっ、一年のど真ん中で青色申告の話題など聞きたくない? うん、夏に税務の話は似合わない。でも確定申告シーズンが来てしまうと、「期日までに間に合わせなきゃ」と「でも帳簿なんかつけたくない」という気持ちがドロドロにミックスされて、昨年と同じやり方しかできないじゃないすか。でも今だったらやり方を変えられる(かもしれない)。
●これまではトゥーランドット級の冷たい氷の心で耐えながら、市販の会計ソフトに領収書や請求書の数字を打ち込んできた。でもその種の会計ソフトって、全般に昭和ライクな設計思想で、PC上で使用するほかのアプリケーションやサービスはどんどん進化しているのに会計ソフトだけ取り残されている感があったんすよね。で、何年も古いバージョンを使い続けていた会計ソフトがサポート外になったのを機に、一念発起してこの状況から脱却することに。最初に検討したのは、今流行中のクラウド型会計ソフト。よくできているみたいだけど、どうも自分が求めるものとは違っているっぽい。自分はクラウドより手元にぜんぶあって、仕組みが目に見えるものがいい。というか、そもそも青色申告の帳簿なんてExcelで管理できる程度のものなんだから、そんなに先進的じゃなくていい……いやむしろ、Excelでできるんじゃないの!? 確定申告の書類そのものは国税庁のサイトで作っているんだから、青色申告用の決算書さえ作れればいいんだし。
●ということに気づいて「エクセル簿記/ExcelB」にたどり着た。会計ソフトといっても、単なるExcelのシートであって、マクロも使われていないし、見た目はまったくそっけない。仕訳帳シートに数字や勘定科目を入れれば、決算書シートに自動的に数字が反映される。「借方」や「貸方」といった最低限の複式簿記の知識は必要なのだが、そのあたりは市販の会計ソフトだって大差ない。なにより操作性がいい。操作性っていうか、なにせExcelそのものなので。複数セルを選択してコピペしたりできて、実に快適。シンプルなのに細部まで練られている。Excelや無料互換ソフトのCalcなどがあれば使える。
●基本的な事柄は無料でできてしまうが、マニュアルを購入するとできることが少し増える。このマニュアルも親切。わずか2000円+税なので、もしマニュアルが必要なくても寄付のつもりで購入しようという気になる。さらば、市販の会計ソフト。白色の人には無用だけど、今後青色を検討するなら(そしてExcelかその互換ソフトになじんでいるなら)、選択肢に入るのでは。

June 18, 2020

ゾンビとわたし その42:映画館で「デッド・ドント・ダイ」(ジム・ジャームッシュ監督)


●演奏会が再開に向けて動き出したように、映画館も再開している。このウィルス禍を受けて、まずは再開第1作として見るべき映画は何か……と考えたら、答えはこれしかない。ジム・ジャームッシュ監督が撮ったまさかのゾンビ映画、「デッド・ドント・ダイ」。
●もちろん、映画館は念入りな感染対策をとっている。建物の入り口では客のおでこに非接触体温計を当てて体温チェック。そして、上映室に入る前にアルコールで手を消毒する。マスク着用必須。指定席は当日のみ発売。座席は市松模様で半分のみ使用。ペアの来場者をわざわざ離す必要はないはずだが、一律に一席飛ばしで座るようになっている。運用上、そのほうがシンプルということなのか。客席はガラガラだが、平日昼だからウィルス禍以前でもこんなもの。
●アメリカの田舎町を舞台に、ビル・マーレイ演じる警察署長とアダム・ドライバー演じる巡査がゾンビ騒動に巻き込まれるというすっとぼけたコメディ。監督も役者もゾンビ映画とは思えない豪華さだが、中身はとにかくゆるい。20分くらいの内容を100分に引き伸ばしたようなテンポ感で、ストーリー展開もかなり投げやりというか、脱力系の笑いに収斂するしかないような話になっている。笑える人には笑えるのだろうし、アダム・ドライバーは「スター・ウォーズ」のカイロ・レンよりこちらのテイストのほうがずっと似合っている。ただ、コメディであったとしても、なにかストーリー展開にアイディアが欲しかった。そして公開のタイミングも幸運とはいえない。今、ワタシたちの世界は現実の災禍に向き合っている。そこで改めて思うのは、コメディやパロディが真に笑えるものになるためには、対象物へのリスペクトが必要なんじゃないかということ。ゾンビ禍が笑いと結びつくのは、それが生々しいものだから。じゃないすかね。

>> 不定期連載「ゾンビと私


June 17, 2020

首都圏でもオーケストラ公演の開催へ

●先日、関西の開催状況をお伝えしたが、首都圏でもようやくオーケストラ公演が再開されそうだ。東京フィルが6月定期公演を開催すると発表。日時も会場も当初予定から変更はなく、6月21日がオーチャード、22日が東京オペラシティ、24日がサントリーホール。ただし、内容は大幅に変更される。まず指揮者のプレトニョフが渡航できないので、レジデント・コンダクターの渡邊一正に変更、曲目はロッシーニの「セビリアの理髪師」序曲とドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。休憩なしの約1時間のプログラム。感染予防策として空席が設けられるため、来場者には新たに指定席が割り振られることになる。
日本フィルは7月10日と11日の東京定期を開催。会場はサントリーホールでホール定員の約50%を使用。広上淳一指揮、プログラムはバッハのブランデンブルク協奏曲第3番とブラームスの交響曲第1番。こちらも休憩なしの1時間プログラムに変更される。
●毎夏ミューザ川崎で開催されるオーケストラの祭典「フェスタサマーミューザKAWASAKI 2020」だが、今年はインターネットライブ映像配信+有観客公演によるハイブリッド開催となると発表された。配信はライブおよびオンデマンドを予定。客席販売数は600席前後ということなので、かなり疎になる模様。なお、当初実施予定だった「かわさきジュニアオーケストラ発表会」と「洗足学園音楽大学」公演は中止、また昭和音楽大学を会場とする「出張サマーミューザ@しんゆり」は会場をミューザ川崎に変更する。曲目や出演者等の最終発表は7月1日をめどに調整中。このハイブリッド方式の開催は妙手。

June 16, 2020

無観客試合とバーチャル観客試合

無人のスタジアム
●ようやくDAZNでサッカー中継が再開された。いったい何か月ぶりの試合なのか。ドイツ、スペインの試合から、いくつかオンデマンドでハイライト視聴する。DAZNはブンデスリーガの放映権を失ってしまったので、ドイツはリーグ戦ではなく、カップ戦DFBポカールの準決勝、バイエルン・ミュンヘン対フランクフルト。フランクフルトには大ベテランとなった長谷部がいるが、最近は鎌田大地が活躍中。この日は途中出場ながらゴールに向かうプレイを何度か見せ、個の力でチャンスを作り出して見事なアシストを披露した。
●ただ、これは中断前の無観客試合でも感じたことだが、いくらこれが公式戦と言われても、練習試合にしか見えない。観客の不在がここまで試合の価値を毀損するとは。すごいプレイが飛び出しても、スタンドが無反応だとぜんぜん興奮しない。こういった中継を見て「サッカー選手になりたい」と憧れる少年がいるだろうか。あるスペインの選手が「たとえ300人でもいいからスタジアムに客を入れてほしい」と語っていたが、それはよくわかる。無人のスタジアムにパッションは生まれない。
●で、欧州の試合をいくつかハイライトで見た後で、不思議な試合が掲載されているのに気付いた。「トレーニングマッチ 磐田vs沼津 リモート応援システム」。ん、なんだこれは? 再生してみると、なんと、無観客なのにサポーターたちのチャントが聞こえるんである! はっ?
●実はこれはYAMAHAの開発するリモート応援システム Remote Cheerer powered by SoundUD を活用したもので、サポーターはスマホアプリを通して会場各所に設置されたスピーカーに応援を届ける。「歓声」とか「激励」とか「拍手」といったボタンをタップすればいいというお手軽さ。声援量はホーム7割、アウェイ3割でコントロールされるんだとか。ずいぶん人工的にも思えるが、選手たちの反応は好意的だったようで、サポータの反応もいい。なにより自分自身が、磐田vs沼津の練習試合のほうが、DFBポカールの準決勝バイエルンvsフランクフルトよりもよほど「本物の試合」らしいと感じてしまった。たとえ疑似的であっても、選手と観客の交感がなければ試合は試合にならないのだと痛感する。

June 15, 2020

サントリーホールCMGオンライン「エラールの午后」

●14日昼はサントリーホール CMG オンライン「エラールの午后」(無観客・有料配信)。室内楽の祭典「チェンバーミュージック・ガーデン」のオンライン版として、ブルーローズ(小ホール)で5日間7公演が開催中。シリーズの一公演、「エラールの午后」を聴いた。出演者は川口成彦(ピアノ)、原田陽(ヴァイオリン)、新倉瞳(チェロ)。動画配信とはいえ、久々にコンサートを聴けたという大きな手ごたえあり。
●動画配信はチケットぴあのサービス PIA LIVE STREAM を利用したもので、プラットフォームはULIZA。見逃し配信はなくライブのみ。動画のビットレートは3000kbps。映像、音声ともにクォリティは十分で、なにひとつ問題なく音楽を味わうことができる。CDや各種音声ストリーミング・サービスを聴くのとまったく同じで、ある意味で生よりも生々しいというか、目の前で鳴っている感があるというか、近接感があって空気感がないオーディオ装置を通した音楽の楽しみ方になる。スピーカーで鳴らしてもよかったんだけど、没入度を得るために部屋を暗くしてヘッドフォンを使用。
●川口成彦さんのピアノは1867年製、サントリーホール所蔵のエラール。ショパンのピアノ三重奏曲の第1楽章で始まって、トークを交えながらグラナドスの「スペイン舞曲集」より第5曲「アンダルーサ」、シューマン~リスト編の「献呈」、サン=サーンスの「白鳥」他の小品が並び、最後はドビュッシーのピアノ三重奏曲で終わるというプログラム。ピアノに合わせて、弦はガット弦、チェロはエンドピンなし、ピッチはA=430Hzに設定したそう。実際には観客が回線の向こう側にいるのにその場にはだれもいないし拍手も起きないということで、やりにくさもあったはずだが、最初のショパンから緊張感も熱気も伝わってきて、しっかりと「本番」の雰囲気になっていった。ピアノは音域ごとの音色の違いがどの作品でも効果的で、特に高音域の軽快なきらびやかさはモダンピアノとはまったく異質のもの。この楽器であれば、ピアノ、ヴァイオリン、チェロの三重奏で音がひとつに融合することに納得。
●ライブ配信と実際の演奏会の最大の違いは、自分が客席のひとりとして参加していないということに尽きる。いかなる意味でもその場の空気を醸成しない。これはサッカー中継と同様。配信だから楽しめる要素もたくさんあるので(コーヒーを飲みながらリラックスして聴けるし、静かにしなければいけないプレッシャーもない)、もし客席に普通に人が入っていたとしても、配信には配信ならではの価値があると実感する。

June 12, 2020

夏が来た

●例年、冬から春にかけて、軽い風邪をなんどかひいているように記憶しているのだが、今年は一度もひいていない。鼻水も出ないし、咳も出ない。ほとんどどこにも出かけずだれにも会わなかったおかげで、ふつうの風邪にもひかないまま春を終え、夏を迎えつつある。今日の東京の最高気温は31度。せめて新型コロナウィルス対策の副産物として、インフルエンザが撲滅されました的なグッドニュースはないものだろうか。風邪ウィルスの半分くらいが絶滅しちゃいました、とか。

●週に一回くらいはourworldindata.orgのデータを見ておいても損はないだろう(各国別100万人あたりの新規感染者数の7日移動平均 対数グラフ)。日本の新規感染者数は100万人あたり0.3人程度。5月11日には1.0人を割っている。5月末から6月頭にぶり返しがあったが、また落ち着いてきたのが今。例によって、グラフは2週間遅れで現実を反映している。アメリカやスウェーデンはいまだに日本の100倍を超える感染者が出ているうえに、グラフがろくに下がっていない。この調子でいくと、彼らは本当に集団免疫を獲得してしまうかもしれない。

June 11, 2020

Jリーグは7月10日から観客入場へ、上限は5000人

長野Uスタジアム
●一昨日に6月27日にJ2とJ3が、7月4日にJ1がリーグ戦を無観客で再開すると記したばかりだが、続いて7月10日から観客を入れて試合を行うという発表があった。えっ、もう? なんか想像以上に急ピッチで再開モードになっていて軽く驚くが、よいニュースであるにはちがいない。ただし、条件があって、観客数は5000人または収容人員の50%の少ないほうが上限。J1の場合、実質的にこれは5000人が上限ということになる。2万人収容のスタジアムで5000人なら「ポツポツ」といったところだが、6万人収容のスタジアムで5000人だったらほとんどだれもいない、みたいな感じだろうか。
●で、その先のスケジュールも発表されていて、8月1日からは収容人員50%までOKということに。観客間の距離を1メートル保つことが条件。どんなドラマティックなゴールが決まっても、抱き合ったり肩を組んだりしないという新しい観戦スタイルが求められそう。
●ところで、サポーターはチャントを歌うのだろうか。普通なら、再開を祝う大合唱が鳴り響くはずだが。

June 10, 2020

チェリビダッケのベルリオーズ「幻想交響曲」

●ワーナーミュージックのサイトでクラシックのニューリリースを眺めると、大半は配信限定のアルバム(主に旧譜)が並んでいて、一部にCD輸入盤があって、ごく一部にCD国内盤があるという状況なのだが、そんな中でセルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルのベルリオーズ「幻想交響曲」が堂々の国内盤発売。どれだけ人気があるのか、チェリビダッケ。1986年6月、ミュンヘンでのライブ音源(BR KLASSIK)。ということは、自分が来日公演で初めてこのコンビを実演で聴いた年と同じ。その来日公演は当時の自分に「オーケストラからこんな音が出るのか」という、すさまじい衝撃をもたらした(特に弱音の表現)。ということもあって、演目は違うが同窓会的な気分で「幻想交響曲」を聴く。録音で聴いても弦楽器の澄んだ音色は尋常ではない。テンポはやはり遅くて、特に第3楽章「野の風景」は20分を超える。ほとんどブルックナー的な恍惚に浸れる。第5楽章「魔女の夜宴の夢」冒頭も、テンポが遅くて不気味で、なんだかお化けが出そうな演奏だな……と思ったが、これは本当にお化けが出てくる音楽だった。
●録音芸術を否定し、生演奏(およびその放送音源)でしか聴けない「幻の指揮者」だったチェリビダッケが、没後に大量の音源が発掘されて豊富なディスコグラフィを誇る指揮者になったのは皮肉だが、2020年になった今、ウィルス禍で世界中のオーケストラが活動を停止するなかでいまだ新譜コーナーに録音が登場するこの状況をどうとらえればいいのだろう。もちろんCDだけではなく、Spotifyでも聴ける。いちばん人気の第4楽章は本日時点で早くも2万6千回を超える再生数を誇る。あんなに録音を嫌っていた指揮者の音楽が、圧縮音源で未来まで聴き継がれていることに感動を覚えずにはいられない。

June 9, 2020

サッカー界も再開へ

●すでにドイツのブンデスリーガでは公式戦が無観客で再開されている。先日も記したように、日本をはじめアジア・オセアニアの水準に比べると、ドイツの感染者数は今なお10倍程度の水準にあるのだが(対数グラフ)、Jリーグよりもずっと早く再開している。このあたりは受け入れられるリスクの違い、ということなんだろうか。
●で、Jリーグだが、ようやく再開日が決まった。6/27にJ2とJ3、7/4にJ1が再開する。まずは無観客での開催からスタートし、状況を見ながら観客を入れる準備を進めていくという。対戦カードはすべて組みなおして、まずは移動を少なくするため、近隣クラブ同士の対戦が優先される。対戦カードの正式発表はこれからだが、報道によればマリノスはアウェイで浦和と対戦する。
●サッカーは放映権前提のビジネスなので、無観客でも試合を再開する意味は大きいと思うが、問題は試合の質。フランクフルトの長谷部が再開第一戦後のインタビューで、熱気がなく、なんのためにサッカーをしているのか考えてしまったと述べていた。練習試合みたいな雰囲気になってしまうと、画面越しで見るファンもつまらない。サガン鳥栖は「顔写真入りの段ボールサポーター」を客席に置くと言っているのだが、これは実は妙案なのかも。サポーターはお金を払って、顔写真入りの段ボールをスタジアムに置くことで、実質的な寄付をできる。選手たちはたとえ段ボールでもそこに支援してくれるファンひとりひとりがいることを実感できる。段ボールを活用したリモートサポート。新しい。

June 8, 2020

モーツァルトとムクドリ

●モーツァルトの十番台のピアノ協奏曲のなかでも特に演奏頻度の高いのが第17番ト長調。この曲にはよく言及される逸話があって、第3楽章の主題をモーツァルトが飼っていたムクドリがさえずったという。以前からおもしろい話だなと思っていたのだが、解説書によってムクドリを購入した後でモーツァルトが曲を教え込んだとするものと、購入する前からムクドリがさえずっていたとなっているものがあって、どちらも微妙に引っかかる点があって落ち着かない気分がしていた。でも、最近ある本を読んで、そのあたりの疑問がひとまず氷解した……という話を、ONTOMO 6月特集「音楽家とペット」に書いた。われわれが日々見かけるムクドリとモーツァルトが飼っていたムクドリは少し違うかも、という話も。ご笑覧ください。
●ムクドリといえば、以前の鳩山首相が記者会見で「ホテルの部屋のテラスにムクドリが飛んできて……」と話している最中に、「すみません、ムクドリではなくヒヨドリでした」と訂正したのが妙に印象に残っている。ムクドリ派でもヒヨドリ派でもないが、言い言いまちがいを正してくれてほっとした。

June 5, 2020

再開へ

●ここ数か月、ずっと中止や延期のお知らせばかりが続いていたが、ここに来てようやく「開催する」という案内を目にするようになってきた。
●オーケストラでは関西フィルが6月27日の第311回定期演奏会を開催すると発表している。会場はザ・シンフォニーホール。席数を減らす、入場時は体温を測定し37.5度以上だと入場不可、ブラボー禁止など、さまざまな対策をとっての開催。日本センチュリー交響楽団は6月20日にやはりザ・シンフォニーホールで「ハイドンマラソンHM.19」を開催するという。東京に目を向けると、6月下旬にまだ中止とも延期とも発表されていない公演がいくつかあるのだが、はたしてどうなるのか。
●映画館も動き出している。METライブビューイングは追加・延期の上映日程を発表。シーズン第6作ガーシュウィン「ポーギーとベス」を6/26(金)から、第7作ヘンデル「アグリッピーナ」を7/3(金)から、第8作ワーグナー「さまよえるオランダ人」を7/10(金)から全国各地で上映する。各作品1週間限定だが、東劇のみ2週上映。東劇は入場口にサーモグラフィーを設置して、高体温が検知された場合は、体温を実測して37.5度以上で入場不可という方式。
●音楽ではないが、東京国立近代美術館も再開された。まずはMOMATコレクションから。入館者は全員要予約で、1時間単位で入館時間を指定するという方式。滞在時間に制限はない。もともとMOMATコレクションはいつも空いているイメージで、しかも外国人観光客の姿も目立っていたから、相当に「疎」な状態になるのでは。いろいろな制限があるとはいえ、潮目が変わりつつあるのを感じる。

June 4, 2020

サントリーホールの「チェンバーミュージック・ガーデン 2020」が有料ライブ配信

●毎年、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で開催されている室内楽の祭典「チェンバーミュージック・ガーデン」。今年は開催中止になった……と思っていたら、出演予定だった音楽家たちを中心に新たなゲストも迎えて「サントリーホール CMG オンライン」として有料ライブ配信が行なわれることになった。期間は6月13日(土)、14日(日)、19日(金)、20日(土)、21日(日)の5日間7公演。料金は一公演あたり500~1500円に設定され、7公演セット視聴券(3500円)も用意される。出演者は堤剛、小菅優、川口成彦、郷古廉、佐藤晴真、大萩康司、鈴木大介、福間洸太朗他。
●動画配信にあたってはチケットぴあのサービス PIA LIVE STREAM が利用される。動画配信プラットフォームはULIZA。ワタシはなじみがないんだけれど、広く利用されているプラットフォームの模様。画質についての記述は見当たらず。特に言及がないのでオンデマンド/追っかけ再生なし、ライブのみという理解でいいんでしょうか。

June 3, 2020

東京アラート発動中

●昨夜、東京アラートが発動された。もし半年前の自分がこの文言を目にしたら、即座に連想するのは第3新東京市に使途襲来が報じられる新世紀エヴァンゲリオンの世界。非常事態宣言が発令され、建築物は地下空間に収容され、射出口からエヴァンゲリオンが飛び出す。だが、現実の東京アラートを発動するのは碇ゲンドウではなく、小池百合子都知事であった。そういえば、コロナ・ウィルスの形って、なんだか使徒っぽい。
●で、その東京アラートの内容だが、「1日あたりの感染者20人以上」(1週間の平均)、「感染経路が不明な人の割合が50%以上」といった目安で発動され、警戒が呼びかけられる。具体的にはなにが起きるのかと思って都の防災サイトで確認したところ、一段と気を引き締めましょうという呼びかけのようだ。都のロードマップがステップ2にあることは変わりがなく、すでに美術館、図書館、劇場、体育館、スポーツジム、学校、商業施設など大半の施設の休業要請は緩和されている。
●数日前、久々に都心に出たが、朝の通勤時間帯のピークを避けたにもかかわらず、電車も駅も普通に混んでいた。7人掛けの椅子にはすべて7人座っていて、立っている人もいる。ホームで電車を待つ際も普通に並んでいて、だれも対人距離を気にしていない感じ、というかホームは狭いので人が多くなれば間隔を開けようがない。毎日通勤でどれだけ大勢の人が密集しているかを思うと、コンサートホールで密集を避ける効果はどれほどのものかと、つい考えてしまう。漠然とした気分の問題にするのではなく、定量的に考えるにはどういった方法があるだろうか。

●さて、後の記録のためにも、ときどき現状を確認しておこう。上のグラフ(画像だとつぶれるのでリンク先参照推奨)は各国の人口あたり新規感染者数(平滑化するために7日移動平均を見る)。ロックダウンを緩和した効果が出ているようで、直近ではアメリカやスウェーデン、フランスなど増加している国も多い。ドイツはほぼ横ばい。普通のグラフだとアジア・オセアニアは欧米に比べて桁違いに感染者数が少ないためゼロ近辺に貼り付いてしまう。そこで同じグラフを対数グラフで表現すると下のグラフになる。縦軸は1、10、100とひと目盛りにつき一桁増える。韓国、オーストラリア、日本ともにやはり直近では増加傾向が見える。といっても、いずれも100万人あたり1人未満のレベルではあるが。まさしく東京都の「ロードマップのイメージ」図の通りの道筋を歩んでいて、今がちょうど(3)「東京アラートの発動」にいると実感する。

June 2, 2020

「探偵コナン・ドイル」(ブラッドリー・ハーパー著/ハヤカワ・ミステリ)

●シャーロック・ホームズ・シリーズのパスティーシュとして出色の出来だと思ったのが、「探偵コナン・ドイル」(ブラッドリー・ハーパー著/ハヤカワ・ミステリ)。ホームズその人ではなく、ホームズの作者であるコナン・ドイルを主人公としたミステリなんである。主人公が実在の人物であるばかりか、犯人も主人公に協力する脇役まで実在の人物。なんと、犯人はあの切り裂きジャックだ。ホームズ・シリーズ第1弾の「緋色の研究」を発表したコナン・ドイルのもとに、前首相から連続殺人事件の捜査に協力してほしいという依頼が届く。おもしろいのはコナン・ドイルが務めるのがホームズ役ではなく、ワトソン役だということ。ドイルは恩師であるベル博士の協力を仰ぐ。ベル博士は異様に鋭い観察眼の持ち主で、ホームズのモデルとなった人物。つまり、ホームズのモデルとなった人物が、ここではホームズ役を務めるのだ。
●コナン・ドイルがホームズ・シリーズを書いていた時代と、切り裂きジャックの事件は実際に重なっている。そしてドイルがホームズ第1作を書いた後、次作を生み出すまでには4年の空白がある。そこにコナン・ドイル対切り裂きジャックという想像上の対決の物語が組み込まれる。切り裂きジャックのニュース記事などは本物が引用されているし、後年のドイルは本当に探偵の仕事にも携わっている。史実からフィクションを創造する手腕が抜群にうまい。
●クラシック音楽で切り裂きジャックといえば、ベルクのオペラ「ルル」。ベルクのオペラは1930年代の作品だが、原作となったヴェーデキントのルル2部作「地霊」「パンドラの箱」は1897年と1904年の作ということで、まだ1888年の切り裂きジャック事件は記憶に新しいところだったのだろう。もっともオペラのなかでの役どころは微妙に「とってつけた感」があって、なんでそこに切り裂きジャックが登場するのかという違和感はある。切り裂きジャックだって自分が端役として描かれることには納得しないだろう。

June 1, 2020

テキシコー

●Eテレの10分番組「テキシコー」が楽しい。「テキシコー」って、なんのことかと思ったら「プログラミング的思考」を略して「テキシコー」。といってもコンピューターは出てこない。物事の手順を頭のなかで組み立てて、先を想像したり、工夫するおもしろが伝えられる。
●キーワードは分解、組み合わせ、一般化、抽象化、シミュレーション。日常生活の至るところで取り入れられているプログラミング的思考に目を向ける。「ピタゴラスイッチ」と同テイストで、より一般化したバージョンとでもいうか。どのコーナーも秀逸なのだが、特に好きなのが「効率第一ダンドリオン」のコーナー。
NHK for Schoolで一通り見ることができる。

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