●演奏会が再開に向けて動き出したように、映画館も再開している。このウィルス禍を受けて、まずは再開第1作として見るべき映画は何か……と考えたら、答えはこれしかない。ジム・ジャームッシュ監督が撮ったまさかのゾンビ映画、「デッド・ドント・ダイ」。
●もちろん、映画館は念入りな感染対策をとっている。建物の入り口では客のおでこに非接触体温計を当てて体温チェック。そして、上映室に入る前にアルコールで手を消毒する。マスク着用必須。指定席は当日のみ発売。座席は市松模様で半分のみ使用。ペアの来場者をわざわざ離す必要はないはずだが、一律に一席飛ばしで座るようになっている。運用上、そのほうがシンプルということなのか。客席はガラガラだが、平日昼だからウィルス禍以前でもこんなもの。
●アメリカの田舎町を舞台に、ビル・マーレイ演じる警察署長とアダム・ドライバー演じる巡査がゾンビ騒動に巻き込まれるというすっとぼけたコメディ。監督も役者もゾンビ映画とは思えない豪華さだが、中身はとにかくゆるい。20分くらいの内容を100分に引き伸ばしたようなテンポ感で、ストーリー展開もかなり投げやりというか、脱力系の笑いに収斂するしかないような話になっている。笑える人には笑えるのだろうし、アダム・ドライバーは「スター・ウォーズ」のカイロ・レンよりこちらのテイストのほうがずっと似合っている。ただ、コメディであったとしても、なにかストーリー展開にアイディアが欲しかった。そして公開のタイミングも幸運とはいえない。今、ワタシたちの世界は現実の災禍に向き合っている。そこで改めて思うのは、コメディやパロディが真に笑えるものになるためには、対象物へのリスペクトが必要なんじゃないかということ。ゾンビ禍が笑いと結びつくのは、それが生々しいものだから。じゃないすかね。