●5日はこちらも久々の東京芸術劇場で、鈴木優人指揮読響の特別演奏会日曜マチネーシリーズ「この自然界に生きる」。読響の再開後最初の演奏会。客席は一席おきに空席を配置、入り口ではサーモグラフィで来場者の体温をチェック。マスク着用、ブラボー禁止。休憩なしの約1時間プログラムということだったが、アンコールもあったので1時間20分くらいか。日曜日としては都内の人出は少なめだったと感じたが(ちなみに知事選があった、関係ないけど)、そうはいっても池袋は賑やか。
●プログラムはマーラーの交響曲第5番からアダージェット、メンデルスゾーンの「管楽器のための序曲」、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」。4月から読響の指揮者/クリエイティヴ・パートナーに就任した鈴木優人さんが用意したのは再開にふさわしく「すべてドの音から始まる曲」。マーラーの「アダージェット」、本質的に愛の音楽だと思うが、この状況下では映画「ベニスに死す」を連想せずにはいられない。疫病名曲(←そんな言葉はない)で始まって、最後は「ジュピター」のアポロン的な解決に至るというストーリーを思い浮かべる。というか、読響の場合は、下野竜也指揮の1月定期でグバイドゥーリナの「ペスト流行時の酒宴」があったので、巧まずして疫病名曲(?)シリーズができてしまった。
●マーラー5番の「小編成の弦楽器によるアダージェット」という、通常の全曲演奏では決して耳にできない響きが新鮮。シャープな8型アダージェット。弦楽器のアダージェットの後は、管楽器の出番でメンデルスゾーンの「管楽器のための序曲」。こちらは弦楽器以上に奏者間距離をうんと取って演奏。この曲、ベートーヴェンの交響曲第7番を連想させる。そして、やたらと耳にこびりつく曲でもある。最後は気迫のこもったモーツァルトの「ジュピター」。少人数ながらもパワフル、演奏する喜びにあふれていた。アンコールにラモーの「優雅なインドの国々」から「未開人の踊り」。客席で何人か紙を掲げていたけど、あれは「紙ブラボー」だったのか。笑。なるほど!
●オーケストラの音がいつもと違った響き方をするのは、散開配置のせいなのか、それとも半分空席の客席のせいで残響が変化するからなのか。これはBunkamuraの東フィルでも感じたことだけど、たとえるなら、お気に入りのアルバムを友人宅のオーディオ装置で聴いたら音質がぜんぜん違っていてた、みたいな感覚。
●最初のオーケストラの入場時にも拍手があった。最後の退場時にもずっと拍手が続いた。優人さんのソロカーテンコールもあった。今はどの演奏会も舞台と客席が一体となっているのでは。再開ブースト。
July 5, 2020