July 27, 2020

映画「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」

●謎の4連休が終わった。7月に4連休なんてあったっけ?と思うが、どうやら東京五輪に向けて今年限りで祝日を移動させたっぽい。国は「GoToキャンペーン」なる旅行促進策を打ち出す一方、東京は感染拡大が止まらず都知事が4連休の外出自粛を要請するというちぐはぐな状況。日本医師会いわく「我慢の4連休」。しかし、街の空気はもう緩んでいて、緊急事態宣言直前のような緊迫感を取り戻すのは難しそうに見えるだが。幻の五輪、GoTo、自粛のパラレルワールド。

●で、そんな状況にふさわしく、自主監禁もの映画ともいうべき「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」をAmazonで観る。今年公開されたフランス産ミステリー。人里離れた豪邸に9人の翻訳家たちが集められる。ベストセラーとなっているミステリー小説「デダリュス」の完結編を世界同時発売するために9人の翻訳家が集められているんだけど、出版社のクレイジーな社長が外部流出を恐れて、翻訳家たちと外部の接触を一切絶つ。まさに缶詰仕事。念入りなことに、翻訳家たちにも1日20ページずつしか原稿を渡さない(そりゃないよと思うけど)。ところが出版社社長のもとに、「冒頭10ページを流出させた。大金を払わなければ全ページを流出させる」という脅迫メールが届く……。
●つまり、これって古典的な密室トリックものなんだけど、それが洗練された形で今風に仕上がっていて、とてもよくできている。そして、映画内に登場する架空の傑作小説「デダリュス」が読みたくなる(イメージとしてはエーコの「薔薇の名前」みたいな位置づけか)。9人の翻訳家、一昔前ならアジア代表として日本語が入っていただろうけど、今はやっぱり中国語。まあ、そうなるか。あと、社長が「翻訳者の名前なんて表紙にも載らないじゃないか」みたいなセリフを発していて驚く。日本語翻訳家のイメージに比べると、ずいぶん翻訳家の地位が低いと感じる。欧州言語間の翻訳だと言語間のハードルが低いがゆえに軽く扱われがちということなのか、それともこの映画内だけの話なのか。

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