●新宿御苑に来てみた。もしウィルス禍がなければ、6月27日にここでドゥダメル指揮ベルリン・フィルによる「1万人の野外コンサート」が開かれていた。「東京・春・音楽祭特別公演 ベルリン・フィル in Tokyo 2020」の一環として予定された公演で、曲はベートーヴェンの「第九」。無料ということもあり、新宿御苑が人で埋め尽くされていたにちがいない。しかし現実の2020年では、ベルリン・フィルは来なかったし、オリンピックも開かれなかったし、「第九」も歌えるのかどうかはっきりしないし、人が密になることもできない。
●梅雨が長引く東京だが、おかげで7月とは思えない涼しさ。もともと平日の新宿御苑は外国人観光客だらけで、日本人のほうが少数派だった。じゃあ今はどうなっているのかというと、もう見たことがないほどガラガラ。都心にこんなにも広大な「疎」があるなんて。ふだんなら決して撮れないひとけのない写真。これほど手の掛けられた美しく広々とした場所を、わずかな人数で占有するというのは圧倒的なぜいたくだ。普段なら「母と子の森」や「大温室」がお気に入りだが、今のように人がいないと「日本庭園」のあたりも格段に楽しめる。ベルリン・フィルが演奏する予定だったのは「風景式庭園」。ここで脳内ベートーヴェンを再生して、ベルリン・フィルの幻影に思いを馳せることも可。
●年間パスポートの有効期限は閉園期間に相当する67日間分が延長される。猛暑がやってきたら楽しい場所ではなくなるので、行くなら今。小雨なら濡れるのも吉。
July 29, 2020