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August 25, 2020

働き方について

●緊急事態宣言の間をどう過ごしていたかといった話題を、ちょうどいま出回っている媒体でいくつか見かけた。中でも驚いたのは、新国立劇場の会報誌 The Atre に掲載されているダンサー・振付家の中村恩恵さんのインタビュー。感染が広がっているのに、医療従事者やライフラインを支える人たちは一生懸命に働いている、なのに踊りだけやってきた自分はなにもできない。そこまではよく聞く話。そこから先が違う。普段買い物をしているスーパーが人手不足で困って募集をしているのを見て、応募して働いているって言うんすよ! ベーカリーでパンを袋詰めにしたり、買い物かごを拭いたり。この話を読んで、ワタシはドカーンと圧倒された。そして、スーパーの人たちは中村さんをどういう方だと認識したのだろうか。
●ANAの機内誌に「翼の王国」がある。今の状況でこの冊子を手にする人は少ないと思うが、自分は機内番組の仕事に携わっているので毎月送ってもらっている。8月号の吉田修一さんのエッセイ「空の冒険」で、ウイルス禍による自粛生活で休み方のコツをつかんだ人が多いんじゃないかと書かれていた。つまり、それまではワーカホリック気味で、仕事をしないと不安になって週末になると「早く月曜日にならないかなあ」と思っていたのだが、いったん休み方のコツをつかめば気分よく休日を過ごせるという話。仕事をしないと不安になる心情は、個人事業主ならみんな覚えがあるはず。ワタシもどちらかといえば月曜日にマイルドなワクワク感を抱くタイプなのだが(今週はどんな仕事をできるのかな~という期待感。ゲームで新ステージに入る感じに似ている)、一方でぐうたらしていたい、怠けたいという気持ちもとても強い。安心して怠けられるのが最強だが、そんな身分は遠い。
●あと、これもびっくりしたんだけど、日経ビジネスの小田嶋隆さん連載「ア・ピース・オブ・警句」。最近の回「君、最近休みをとったのはいつだね?」のなかで、氏はこの30年来、執筆に充てるのは週に3日だけだと書いている(そして経済的不安を感じなかった日々はほとんどないとも)。これはある意味で目から鱗。執筆日は週に3日だけであっても、ネタを考える時間も入れれば「完全な休養日は一年のうちに何日もない」とも見なせるのはよくわかる話。そもそも個人で仕事をしていると、経理や総務や営業もぜんぶ自前でやるので、本質業務に充てられる時間は実は案外少ない。忙しいと神経が参るが、ヒマだと不安になるという真実は、つい最近別の場所でも目にしたけど、だれが書いていたんだっけ。