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October 7, 2020

鈴木優人指揮読響のメシアン「峡谷から星たちへ……」 サントリー音楽賞受賞記念コンサート

●6日はサントリーホールで鈴木優人指揮読響のメシアン「峡谷から星たちへ……」。ピアノは児玉桃。第49回サントリー音楽賞受賞記念コンサートとして開催された公演で、本来であればシルヴァン・カンブルランが指揮する予定だったが、来日できないので読響指揮者&クリエイティヴ・パートナーである鈴木優人さんが出演。優人さんは以前に東響で「トゥーランガリラ交響曲」、N響で「忘れられたささげもの」を指揮したのを聴いているので、これは納得。「峡谷から星たちへ……」は約100分の大曲。全3部、第2部の後に休憩あり。ピアノに加えて、シロリンバ、グロッケンシュピール、ホルンなどが活躍して彩度の高い響きを作り出す作品だが、編成そのものは小さいので、ステージ上は散開配置が可能。メシアンの濃密さと執拗さ、恍惚感をたっぷりと味わう。キレがあって、強奏時の響きの美しさも十分。ホルン・ソロ(日橋辰朗)は圧巻。
●作品の題材となっているのはアメリカの大自然。ユタ州ブライスキャニオンの雄大な景観に、メシアンは創造主の神秘を見て取ったことだろう。巨大な渓谷は別の惑星を連想させ、第6曲でホルン独奏の「恒星の呼び声」を聞き、第8曲では「アルデバランの星の歌」を耳にする。峡谷の赤橙色の岩から出発して、思いは橙色巨星へと巡っている。神秘に代えて、自然の摂理に対する畏怖の念をもって共感可能な作品。そして、やはりたくさんの鳥が登場する。第2曲「ムクドリモドキ」、第4曲「マミジロツグミヒタキ」、第9曲「マネシツグミ」、第10曲「モリツグミ」、第11曲「ハワイツグミ、ソウシチョウ、ハワイヒタキ、シキチョウ」、さらにこれら以外の曲でも鳥はさえずっていると思う。もっともなじみのある鳥はいないのだが。ソウシチョウは「日本の侵略的外来種ワースト100」に選ばれているくらいなので、きっと身近にもいるのだろうが……。
●「鳥のカタログ」でもそうだけど、ピアノでさえずる鳥という発想がすごい。ベートーヴェンの「田園」みたいに木管楽器がさえずったり、ヴィヴァルディの「春」みたいにヴァイオリンがさえずったりという発想は自然だと思うが、ピアノで鳥。実際の鳥は和音で鳴かないし、強靭な打鍵に相当する鳴き声もなさそうなもの(断末魔の叫びでもないかぎり)。そもそも曲から各々の鳥を感知できるのかという疑問だって、なかったらウソだろう。たとえば上の映像はマネシツグミのさえずり。一方、「峡谷から星たちへ……」の第9曲「マネシツグミ」はこんな曲だ。いわれてみれば、マネシツグミ、なのか。近年では鳥類は恐竜の子孫であることがすっかり定説化しているそうなのだが、むしろ恐竜感があるかも?