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October 16, 2020

河村尚子ピアノ・リサイタルを動画配信で

●13日は紀尾井ホールで河村尚子ピアノ・リサイタル。今回はライブ・ストリーミング配信で聴いてみた。「ぴあライブストリーム」や「ジャパン・アーツ ライブ・ビューイング」で、リビングルーム席として配信用のチケットが販売されている(今も買える、オンデマンドで聴けるので)。PCでアクセスし、ヘッドフォンで聴く。画質も音質も十分。コンサートホールではたっぷりと間接音を含んだ「ホールの音」を聴くが、こうして配信で聴くときは近接した音像を耳にすることになる。つまり、間近で聴いている感じ。十全に鳴り切ったスタインウェイの音色に魅了される。
●プログラムは前半がモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」、シューベルトのピアノ・ソナタ第13番イ長調、後半が藤倉大の「春と修羅」栄伝亜夜バージョン(!)、ショパンの夜想曲第17番op62-1、スケルツォ第4番、幻想ポロネーズ。アンコールにショパンの夜想曲第8番op27-2、幻想即興曲、シューベルトのピアノ・ソナタ第13番から第2楽章をもう一度。藤倉大の「春と修羅」は映画「蜜蜂と遠雷」中のコンクール課題曲という設定で書かれた曲で、物語中の登場人物によってバージョンがいくつかある。河村さんが弾いたのは映画と同様、主人公・栄伝亜夜のバージョン。映画で使われていた曲が、こうして実際のリサイタルでも演奏されていることに不思議な感動を覚える。実は当日、都合により頭から生で聴くことができず、後半から聴いて、後でオンデマンドを利用して前半を聴いた。そのせいもあってか、もっとも心に残ったのは前半最後のシューベルト。聴いた翌日になってもずっと頭の中まで追いかけてくるかのような中毒性がある。なんという孤独な音楽なのか。
●無観客公演が続いていた頃にいろんなライブ配信が試みられたが、こうして観客入り公演が再開されても有料配信が続いているのはありがたい。もともと平時であっても家庭の事情など、いろんな理由で聴きたくても会場に足を運べない人は多いはず。また、今後の感染状況によって需要が高まる可能性も十分あると思う。